大和物語
大空をわたる春の日の光だからだろうか。よそにばかりいて、のどかにしているようだ。
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行って見ることのできないお前のためにと思わなければ、誰がこの家の菊を折ったりするだろうか。
私のもとへ色を折り取って届けてくださるあなたがいなければ、よそながらでも菊の花を見ることができたでしょうか。
雲でもないのに木の高い峰にいるものは、つらい世に背を向けたこの身なのであった。
同じ枝でありながら、分け隔てて霜を置く秋であるから、光までが恨めしく思われることだ。
花の色を見ればきっと分かるだろう。初霜が心を分け隔てて置くことはあるまいと思う。
海のように深い心は持っているのに、それでも恨まれてしまうものであった。
秋の野を分け入っていく鹿も、私と同じように、茂った障りに阻まれて声を上げて鳴いているのだろうか。
枝を折って道しるべにしながら行く旅ではあるが、はかない命のことは分からないので、帰ってくることもあるまい。
今すぐ帰ってくると言って別れた人なので、これが最後だと聞いても、やはり待たれてしまう。
夕方になって道も見えないけれど、通い慣れたあなたの家へは、以前から通っていた馬にまかせて行くのだ。
馬にまかせて来ただけだったのね。はかなくも、あなたの心が来たのだと思っていたことだ。
あちらこちらの人目もまれな山里に住まいを構えることになろうとは、あなたは思ってもみなかっただろう。
陸奥の安達が原の黒塚に、鬼が籠もっていると聞くのは本当だろうか。
花の盛りが過ぎてしまうのではないかと、蛙の鳴く井手の山吹のことが気がかりでならない。
大空の雲の通い路を見てみたいものだ。鳥だけが行くので、跡もありはしない。