大和物語
私の家を、あなたがいつ慣れ親しんだというので、ならし葉の名のとおり慣れ顔で、枝を折りに寄こすのでしょうか。
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柏木に葉守の神がいらしたのを知らずに折ってしまった。どうか祟りなさいますな。
夜ごとに恋しさがまさるこの狩衣は、心を尽くさせるものであった。
陸奥の安達の山も、もろともに越えるのであったなら、別れの悲しみもなかっただろうに。
賀茂川の瀬に伏している鮎の、寝ているのを捕って、私は寝もせずに夜を明かした。夢に見えたでしょうか。
篠塚の駅ではないが、今か今かと待ちわびていたあなたは、むなしく亡くなってしまったのだった。
咲き匂って散らす風を待つばかりの山桜も、人の世の命に比べれば長いものであった。
春ごとに花は散っても、また咲くにちがいない。二度と逢いがたい人の世こそがつらい。
池は今も昔のままの鏡であるのに、その面に姿を映していたあなたがいないのが悲しい。
別れねばならぬことさえあるというのに、一日中こうして待つことまでも嘆かなければならないとは。
家の近くへ移して植えた甲斐もなく、ただ待ち遠しくばかり見える花であることだ。
あなたが行く越の白山を知らなくても、雪の降るにまかせて、その跡を訪ね尋ねよう。
今宵こそ、涙の川に入った千鳥が鳴きながら帰るのだと、あなたはご存じないのだろうか。
長い夜を明かす、その明石の浦で焼く塩の煙は、空に立ちのぼらないものだろうか。
竹取の翁が夜ごとに泣きながら引き留めたという姫君は、大君のもとへと、今宵にかぎって行ってしまうのか。
出し抜けに惑う心だと聞くだけで、慰めるのもたやすいことに思われることだ。