古典和歌stream

大和物語

あけぬとて急ぎもぞする逢坂の
きり立ちぬとも人に聞かすな

夜が明けたといって急いでしまうといけない。逢坂に霧が立ったとしても、あの人に聞かせないでほしい。

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大和物語

いかにしてわれは消えなむしら露の
かへりてのちのものは思はじ

どうにかして私は消えてしまいたい。白露が消えるように、帰ったのちに物思いをせずにすむように。

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大和物語

垣ほなる君が朝顔見てしかな
かへりてのちはものや思ふと

垣根の朝顔のような、あなたの朝の顔を見てみたいものだ。帰ったのちに本当に物思いをするのかと。

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大和物語

心をし君にとどめて来にしかば
もの思ふことはわれにやあるらむ

心をあなたのもとに残して帰ってきたのだから、物思いをするのは、はたして私なのだろうか。

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大和物語

たましひはをかしきこともなかりけり
よろづのものはからにぞありける

魂などというものは、面白いことも何もなかった。あらゆるものは、殻でこそあったのだ。

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大和物語

たかくともなにかはせむくれ竹の
ひと夜ふた夜のあだのふしをば

高くあってもどうしようもない。呉竹の一節二節のような、ひと夜ふた夜のかりそめの契りなど。

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大和物語

ゆゆしとて忌むとも今はかひもあらじ
憂きをばこれに思ひ寄せてむ

不吉だといって忌み嫌ったところで、今となっては何の甲斐もあるまい。せめてつらい思いをこの扇に託して送ろう。

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大和物語

ゆゆしとて忌みけるものをわがために
なしといはぬはたがつらきなり

不吉だといって忌み嫌うべきものを、私のためにないとは言ってくださらない。つれないのは、はたして誰なのだろう。

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大和物語

もの思ふと月日のゆくも知らぬまに
今年は今日にはてぬとか聞く

物思いをして、月日の過ぎるのも知らないうちに、今年は今日で終わってしまうと聞く。

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大和物語

いかにしてかく思ふてふことをだに
人づてならで君に聞かせむ

どうにかして、このように思っているということだけでもせめて、人づてでなくあなたに聞かせたいものだ。

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大和物語

今日そへに暮れざらめやはと思へども
たへぬは人の心なりけり

今日とてやがては暮れないことがあろうかと思うけれど、それまで堪えられないのが人の心なのだった。

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大和物語

伊勢の海のちひろの浜にひろふとも
今はかひなくおもほゆるかな

伊勢の海の千尋の浜で拾ったとしても、今となっては何の甲斐もなく思われることだ。

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大和物語

なき人の巣守にだにもなるべきを
いまはとかへる今日のかなしさ

亡き人の巣守にでもなってくださるはずだったのに、もうこれまでと帰っていかれる今日の悲しさよ。

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大和物語

巣守にとおもふ心はとどむれど
かひあるべくもなしとこそ聞け

巣守になろうと思う心はとどめているけれど、その甲斐があるはずもないと聞いております。

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大和物語

白山に降りにし雪のあと絶えて
今はこし路の人も通はず

白山に降り積もった雪で道の跡も絶えて、今は越路を通う人もない。

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大和物語

浪の立つかたも知らねどわたつみの
うらやましくもおもほゆるかな

波の立つ方角も知らないけれど、海のように、うらやましく思われることだ。

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