万葉集
我が家に咲いた秋萩が散ってしまって、実になるまで、あなたに逢わないことよ。
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我が家の萩が咲いた。散らないうちに、早く来て見るがよい、奈良の里の人よ。
飛び石の間ごとに生えているかお花のように、花のようにはかないものであったのだ。ずっと見続けていると。
藤原の古びてしまった里の秋萩は、咲いて散ってしまった。あなたを待ちかねて。
秋萩が散ってしまいそうなので手折って持ち、見ているけれども寂しい。あなたではないので。
朝に咲いて夕方にはしぼんでしまう月草のように、消え入りそうな恋を私はしていることだ。
秋津野のすすきを刈り添えて、秋萩の花を屋根に葺いてください、あなたの仮小屋に。
咲いたとも知らずにいるなら黙っていられようものを。この秋萩をむやみに見せつけて。
秋になると雁が飛び越えていく龍田山の、その「たつ」ではないが、立っていても座っていても、あなたのことばかり思っている。
我が家の葛の葉は日ごとにますます色づいた。おいでにならないあなたは、どういうお気持ちなのだろう。
山のさねかずらが紅葉するまで、恋人に逢わずに私は恋い続けているのだろうか。
紅葉の散り過ぎないように忘れられないあの子を、人妻として見ているだけでいるのだろうか。こんなに恋しいのに。
あなたを恋しく思って、しおれて沈み込んで私がいると、秋風が吹いて、月が西に傾いてしまった。
あなたは秋の夜の月なのだろうか。雲に隠れて、しばらく見ないと、これほど恋しいのは。
九月の有明の月夜のように、ずっと変わらずにあなたが来てくださるなら、私はこんなに恋い慕うだろうか。
ええままよ、もう恋い慕うまいとするけれども、秋風の寒く吹く夜は、あなたのことを思ってしまう。