万葉集
ある人は、ああ気の利かないことだと思っているだろう。秋の長い夜を、目が覚めたまま臥せっているばかりで。
詳細を見る
秋の夜は長いと言うけれども、積もり積もった恋の思いを晴らしていると、短いものであったよ。
秋の木の葉の色に美しく染めた衣を、私は着るまい。あなたに差し上げたら、夜も着てくださるように。
旅先でさえ紐を解いて寝るものなのに、人の噂がうるさいので、私は着のみ着のままで寝ている。この長い夜を。
しぐれの降る夜明け前の月夜に、紐を解かずに恋い慕っているであろうあなたと、一緒にいられたらよいのに。
紅葉に置く白露の色のように、ほんのわずかでも表に出すまいと思っているのに、噂がうるさいことよ。
雨が降るとわき立って流れる山川が岩に当たって砕けるように、あなたが砕くような心を私は持つまい。
神官たちが大切に祭っている社の紅葉でさえも、標縄を越えて散るというのに。
万葉集 - 柿本人麻呂
私の袖に霰が飛び散る。これを袖に包み隠して、消さずにおこう。妻が見るために。
山が高いからだろうか、巻向の崖の小松に雪が降ってくる。
巻向の檜の林もまだ雲がかかっていないのに、小松の梢から泡雪が流れるように降ってくる。
山道もわからない。白橿の枝もたわむほどに雪が降り積もっているので。
奈良山の峰はまだ曇っている。なるほど、だからこそ垣根の下の雪は消えずにいたのだ。
どうせ降るのなら袖までも濡れて通るほどに降ってほしい雪が、空で消えてばかりいる。
夜が寒かったので、朝に戸を開けて出て見ると、庭にもまだらに雪が降り積もっていた。
夕方になると袖が寒い。高松の山の木々の一本一本に雪が降り積もっている。