万葉集
道のほとりのすすきの下に生える思い草のように、今さら改めて何を思い悩むことがあろうか。
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草が深いのでこおろぎがたくさん鳴いている我が家の萩を見に、あなたはいつおいでになるのだろう。
秋めいてくると水草の花がこぼれ落ちてしまいそうなほどに、私は思い悩んでいるけれども、あの人は知らないだろう。直接逢っていないのだから。
どうしてあなたを嫌うことがあろうか。秋萩のその初花のように、うれしいものなのに。
転げ回って恋い死にしようとも、朝顔の花のようにはっきりと顔色には出すまい。
言葉に出して言うのは恐れ多いので、朝顔の花のようには表に咲き出ることのない恋をしていることだ。
雁の初声を聞いて咲き出した我が家の秋萩を、見に来てください、あなた。
入野のすすきの初穂のように初々しい恋人の手を、いつになったら枕にすることができるだろうか。
恋い慕う日々が長く続いたので、庭の韓藍の花のように、思いが表に出てしまったことだ。
私の里に今咲いている花の女郎花のように、こらえきれない心で、やはり恋しく思ってしまったことだ。
萩の花が咲いているのを見ると、あなたに逢わずに、本当に久しくなってしまったことだ。
朝露の中で咲き誇っている月草が、日が傾くにつれてしぼんでいくように、私も消え入りそうに思われる。
長い夜をあなたに恋い続けて生きているよりは、咲いて散ってしまった花であればよかったのに。
愛しい妻に逢うという名の逢坂山のすすきのように、表に穂を出さずに恋い続けることだ。
ほんのちょっとでも今すぐ見たい。秋萩のしなやかさのようであろう恋人の姿を。
秋萩の咲く花野のすすきが穂を出さないように、表に出さずに私が恋い続けている、人目を忍ぶ妻よ。