古典和歌stream

源氏物語 - 紫式部

ささがにのふるまひしるき夕暮れに
ひるま過ぐせといふがあやなさ

蜘蛛の振る舞いで人の訪れがはっきりとわかる夕暮れに、昼間を過ごしてから来いと言うのは、筋の通らないことだ。

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源氏物語 - 紫式部

逢ふことの夜をし隔てぬ仲ならば
ひる間も何かまばゆからまし

逢うのに一夜も間を置かない仲であるなら、昼間であっても何もきまり悪いことはないだろうに。

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源氏物語 - 紫式部

つれなきを恨みも果てぬしののめに
とりあへぬまでおどろかすらむ

つれない人を恨みきらないうちに明けてゆく東雲に、取るものも取りあえないほど、鶏はなぜ私を急き立てるのだろう。

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源氏物語 - 紫式部

身の憂さを嘆くにあかで明くる夜は
とり重ねてぞ音もなかれける

わが身のつらさを嘆いても嘆き足りないまま明けていく夜は、鶏の声に重ねて、私の泣く声まで出てしまうのだ。

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源氏物語 - 紫式部

見し夢を逢ふ夜ありやと嘆く間に
目さへあはでぞ頃も経にける

あの夜見た夢のような逢瀬が、もう一度あるだろうかと嘆いているうちに、目を合わせることさえないまま日々が過ぎてしまった。

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源氏物語 - 紫式部

帚木の心を知らでその原の
道にあやなくまどひぬるかな

近づけば消えるという帚木のようなあなたの心も知らずに、その園原の道でむなしく迷ってしまったことだ。

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源氏物語 - 紫式部

数ならぬ伏屋に生ふる名の憂さに
あるにもあらず消ゆる帚木

数にも入らない賤しい伏屋に生えているという名のつらさに、あるかないかもわからないまま消えてしまう帚木なのだ。

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源氏物語 - 紫式部

空蝉の身をかへてける木のもとに
なほ人がらのなつかしきかな

蝉が殻を脱ぎ捨てて姿を変えた、その木のもとで、それでもやはりあの人の人柄が慕わしく思われることだ。

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源氏物語 - 紫式部

空蝉の羽におく露の木がくれて
忍び忍びに濡るる袖かな

蝉の羽におく露が木の陰に隠れて見えないように、人目を忍んで、こっそりと濡れているわが袖であることよ。

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源氏物語 - 紫式部

心あてにそれかとぞ見る白露の
光そへたる夕顔の花

あて推量に、あの方かと見ている。白露の光を添えている夕顔の花のような方を。

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源氏物語 - 紫式部

寄りてこそそれかとも見めたそかれに
ほのぼの見つる花の夕顔

近寄ってこそ、それかどうか見定められるだろう。黄昏時にぼんやりと見えた夕顔の花は。

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源氏物語 - 紫式部

朝霧の晴れ間も待たぬ気色にて
花に心をとめぬとぞ見る

朝霧の晴れ間も待たない様子で帰っていくので、花には心をとめていないのだと見える。

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源氏物語 - 紫式部

咲く花に移るてふ名はつつめども
折らで過ぎ憂き今朝の朝顔

咲く花ごとに心を移すという評判は隠したいけれど、折らずに通り過ぎるのはつらい、今朝の朝顔よ。

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源氏物語 - 紫式部

優婆塞が行ふ道をしるべにて
来む世も深き契り違ふな

優婆塞が仏道を修行している、その道を導きとして、来世までも深い約束に背かないでほしい。

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源氏物語 - 紫式部

前の世の契り知らるる身の憂さに
行く末かねて頼みがたさよ

前世の宿縁の薄さが思い知られるわが身のつらさゆえに、行く末まで前もって頼みにするのは難しいことだ。

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源氏物語 - 紫式部

いにしへもかくやは人の惑ひけむ
我がまだ知らぬしののめの道

昔の人もこのように恋の道に迷ったのだろうか。私がまだ知らない、この明け方の道よ。

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