源氏物語 - 紫式部
山の端の心も知らずに進んでいく月は、上の空のままで光が絶えてしまうのではないだろうか。
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夕方の露を得て紐を解くように咲く花が顔を見せるのは、道すがらの縁で出会ったつながりがあったからなのだ。
光があると見た夕顔の上露は、黄昏時の見間違いだったのだ。
親しんだ人の火葬の煙を雲だと思って眺めると、夕方の空までも親しく感じられることだ。
見舞いもしないのをなぜかとお尋ねにもならないまま月日が経つうちに、私はどれほど思い乱れていることだろう。
この世はつらいものだと知ってしまったのに、それでもまた、あなたの言葉に頼って生きていく命であることよ。
泣きながら今日は私が結ぶこの下紐を、いつの世に解いて見ることができるだろうか。
かすかにでも軒端の荻を結ぶことがなかったなら、露ほどの恨み言を何にかけて言えばよかっただろう。
それとなくほのめかす風につけても、下の荻は半ばまで霜に閉ざされてほどけずにいる。
再び逢うまでの形見とだけ思って見ているうちに、袖はすっかり涙で朽ちてしまったことだ。
蝉の羽のような薄い夏衣も季節が変わってしまったが、それが返されるのを見ると、声を上げて泣かれてしまうことだ。
亡くなってしまった人も、今日別れていく人も、それぞれ二つの道に分かれて、その行方も分からない秋の暮れであることだ。
これから生い立っていく先も分からない若草を、後に残して消えていく露には、消えていく空もない。
初草が生い育っていく行く末も分からないうちに、どうして露は消えようとするのだろうか。
初草の若葉のような幼い人を見てからは、旅寝の袖も涙の露で乾く間がない。
旅の枕を結ぶ今宵だけの涙がちな思いを、深山にこもる者の苔の衣の涙とは、どうか比べないでほしい。