- 表題
- -
- 古今和歌集
古今和歌集 - よみ人しらず
玉かづら今は絶ゆとや吹く風の
音にも人の聞こえざるらむ
つる草が切れるように、もう二人の仲は絶えるというのだろうか。吹く風の音のようなかすかな便りにさえ、あの人のことが聞こえてこない。
古今和歌集 - よみ人しらず
山の井の浅き心も思はぬに
影ばかりのみ人の見ゆらむ
山の湧き水のたまりのような浅い心で思っているわけでもないのに、どうしてあの人は水に映る影のように、姿ばかりしか見せないのだろう。
古今和歌集 - よみ人しらず
夢にだに逢ふこと難くなりゆくは
我や寝を寝ぬ人や忘るる
せめて夢の中でさえ逢うことが難しくなっていくのは、私が眠れずにいるからなのか、それともあの人が私を忘れてしまったからなのか。
古今和歌集 - 貞登
独りのみながめふるやのつまなれば
人をしのぶの草ぞ生ひける
ただ独りで長雨の降るのを眺めながら物思いに沈み、日々を過ごす古い家の軒端なので、人を偲ぶという名の忍ぶ草が生えていることだ。
古今和歌集 - よみ人しらず
来めやとは思ふものからひぐらしの
鳴く夕暮れは立ち待たれつつ
来るだろうか、いや来はしないとは思うものの、ひぐらしの鳴く夕暮れには、つい立ち上がって待たずにはいられない。
古今和歌集 - よみ人しらず
今は来じと思ふものから忘れつつ
待たるることのまだもやまぬか
今はもう来ないだろうと思うものの、そのことをつい忘れては、自然と待ってしまうことが、まだやまないのだろうか。
古今和歌集 - よみ人しらず
月夜には来ぬ人待たるかき曇り
雨も降らなむわびつつも寝む
月の明るい夜には、来ない人でもつい待ってしまう。いっそ空が曇って雨でも降ってほしい。そうすれば嘆きながらでも寝てしまおう。
古今和歌集 - よみ人しらず
植ゑていにし秋田刈るまで見えこねば
今朝初雁の音にぞなきぬる
苗を植えて去っていったあの人が、その秋の田を刈る時期になっても姿を見せないので、今朝は初雁が鳴くように、声をあげて泣いてしまった。