万葉集 - 田辺福麻呂
慣れ親しんできた奈良の都が荒れていくので、外に出て立つたびに嘆きがいっそう増さる。
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三香の原の布当の野辺が清らかなので、ここを大宮所とお定めになったらしい。
山は高く、川の瀬は清らかだ。百代の後まで、神々しさを増していくであろう、この大宮所は。
泉川の流れゆく瀬の水が絶えることがあれば、そのときこそ大宮所も移っていくだろう。
布当山の連なる山々を見ると、百代の後までも変わることはないであろう、この大宮所は。
娘子たちが紡いだ麻糸を掛けるという桛、その名をもつ鹿背の山は、時が移ったので都となった。
鹿背の山は木立が茂っているので、毎朝やって来ては鳴き響かせている、鴬の声よ。
狛山で鳴くほととぎすは、泉川の渡り場が遠いので、ここには通って来ない。
三香の原の久迩の都は荒れてしまった。大宮人たちがよそへ移ってしまったので。
咲く花の色は変わらない。ももしきの大宮人こそが、すっかり入れ替わってしまったのだ。
大君が通い続ける難波の宮は海が近いので、海人の娘子たちが乗っている舟が見える。
潮が引くと、葦辺で騒ぐ白い鶴の、妻を呼ぶ声は、宮殿もとどろくほどに響く。
敏馬の浦は、多くの舟がただ通り過ぎて行ってよいような浜ではないのに。
浜が清らかで、浦が美しいので、神代の昔から多くの舟が泊まってきた、大和太の浜よ。
万葉集
天の海に雲の波が立ち、月の舟が星の林の中へ漕ぎ隠れてゆくのが見える。
普段はまったくそうは思わないのに、この月が空を過ぎて隠れてしまうのが惜しい今宵であることよ。