万葉集
大君の御笠の山が帯としている細い谷川の、瀬音のなんと清らかなことよ。
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当分は見られないだろうと思っていた吉野の大川の淀を、今日見ることができたことよ。
馬を並べて、吉野川を見たいと思い、山を越えてやって来て、激流のほとりで遊んだことだ。
噂に聞いてはいたが、目ではまだ見ていなかった吉野川の六田の淀を、今日見たことよ。
河鹿の鳴く清らかな川原を今日見てしまったからには、いつまた山を越えて来て、眺めながら賞美することができるだろうか。
泊瀬川の、白い木綿の花のように白く泡立って流れ落ちる瀬が清らかだというので、見に来た私なのだ。
泊瀬川の流れる水脈の瀬が速いので、堰を越えてゆく波の音の清らかなことよ。
桧隈の桧隈川の瀬が速いので、渡るのにあなたの手を取ったならば、人々は二人の仲をあれこれと噂するだろうか。
清めた種を蒔く新しく開いた田を探し求めようと、足結いをして出かけ、この川の瀬に濡れてしまった。
昔の人もこのように聞きながら賞美したのだろうか、この布留川の清らかな瀬の音を。
はねかづらを今つけたばかりの少女が初々しいので、さあと誘う、その率川の瀬音の清らかさよ。
この小川に霧が立ちこめている。激しく流れてゆく走井のほとりで、言挙げなどしてはいないのに。
私の衣の紐を妻がその手で結う、その名をもつ結八川を、また帰って来て見よう、万代までも。
妻の紐を結うという名の結八の河内を、昔の人々はみな見たというが、今ここを誰が知っているだろうか。
私の黒髪に降りかかってとどまっている天の露霜は、手に取ると次々に消えてしまう。
島めぐりをしていて磯で見かけた花は、たとえ風が吹いて波が打ち寄せても、採らずにはおくものか。