万葉集
川のほとりのいつ藻の花のように、いつもいつもおいでください、あなた。いつだって時ならぬことがあるでしょうか。
詳細を見る
春雨がやまずに降りに降っている。私が恋しく思う人の顔さえも見せてくれないのに。
恋しいあの子を思い続けていると、春雨もそれを知っているかのように、やまずに降り続いている。
私を思ってもくれない恋人のことを、むやみに、菅の根のように長い春の日じゅう思って過ごすのだろうか。
春になると真っ先に鳴く鳥の鴬のように、先に言葉をかけてくれたあなたを待とう。
私を思ってはいないであろうあの子のために、玉の緒のように長い春の日じゅう、思い続けて過ごすことだ。
旅の空にあって妻を恋い慕っているらしい。ほととぎすが神なび山で、夜が更けてから鳴いている。
ほととぎすよ、お前の初声は私にくれないものか。五月の薬玉に交ぜて緒に通そう。
朝霞がたなびく野辺に、山のほととぎすはいつになったらやって来て鳴くのだろう。
朝霧の立ちこめる幾重もの山を越えて、呼子鳥よ、お前は鳴きながらやって来るのか。泊まる宿もないのに。
ほととぎすの鳴く声を聞いているか、卯の花の咲いては散る岡で葛を引いている娘たちよ。
月夜が美しいので鳴くほととぎすの姿を見たいと思って、私は草を刈り取った。一緒に見る人がいればよいのに。
藤の花が散ることを惜しんで、ほととぎすが今城の岡を鳴きながら越えて行くようだ。
朝霧の立ちこめる幾重もの山を越えて、ほととぎすが卯の花のあたりを通って、鳴きながら越えて来た。
木が高くなるようには決して木を植えまい。ほととぎすが来て鳴き響かせて、恋心をつのらせるから。
逢いがたいあなたにようやく逢えたこの夜、ほととぎすよ、ほかの時よりも今こそ鳴いておくれ。