万葉集
木々が茂って暗い夕闇であるのに、ほととぎすはどこを自分の家として鳴き渡っていくのだろう。
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ほととぎすが今朝の明け方に鳴いたのを、あなたは聞いたでしょうか。それとも朝寝をしていたでしょうか。
ほととぎすが花橘の枝にとまって鳴き響かせるので、花は次々と散っていく。
いまいましいことよ、このろくでなしのほととぎすめ。今こそ、声が嗄れるほどに来て鳴き響かせるがよいのに。
今夜のぼんやりとおぼつかない闇の中で、ほととぎすの鳴いている声の、なんと遥かに聞こえることよ。
五月の山、卯の花の咲く月夜、ほととぎすの声は聞いても聞き飽きない。もう一度鳴かないものか。
ほととぎすよ、来てとまって鳴いてくれないものか。我が家の花橘が、その声で地に落ちるのを見よう。
ほととぎすよ、お前の声をいやだと思う時はない。けれども菖蒲草をかづらにする日には、ここを通って鳴き渡っておくれ。
大和には鳴きながら飛んで来ているのだろうか、ほととぎすよ。お前が鳴くたびに、亡くなった人のことが思い出される。
卯の花が散るのを惜しんで、ほととぎすは野に出たり山に入ったりして、来ては鳴き響かせている。
橘の林を植えよう。ほととぎすがいつまでも冬になるまで住み続けるように。
雨上がりの雲に連れ添うようにして、ほととぎすが春日を目指して、ここを鳴きながら渡っていく。
物思いをして眠れなかった明け方に、ほととぎすが鳴いて渡っていく。どうしようもないほどに。
私の衣をあの方に着せなさいと、ほととぎすが私を促している。袖に来てとまりながら。
昔なじみのほととぎすを、珍しいものとして今お前は来るのか。恋しく思っていたところに。
これほど雨が降っているのに、ほととぎすは卯の花の咲く山で、なおも鳴いているのだろうか。