古典和歌stream

十六夜日記 - 阿仏尼

とゞめおくふるき枕のちりをだに
わが立ちさらばたれかはらはむ

あとに残しておく古い枕の、その塵さえも、私が立ち去ってしまったら、いったい誰が払うのだろうか。

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十六夜日記 - 阿仏尼

和歌の浦にかきとゞめたるもしほぐさ
これをむかしのかたみとも見よ

和歌の浦でかき集めてとどめておいた藻塩草。これを、亡き昔の人の形見とも思って見なさい。

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十六夜日記 - 阿仏尼

あなかしこよこ浪かくなはま千鳥
ひとかたならぬあとをおもはゞ

ああ、けっして横波をかけてくれるな、浜千鳥よ。ひととおりでないこの跡を思うのならば。

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十六夜日記 - 冷泉為相

つひによもあだにはならじもしほぐさ
かたみをみよの跡にのこせば

けっして無駄にはなるまい、この藻塩草は。形見を、三代にわたる跡として残してくださるのだから。

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十六夜日記 - 冷泉為相

まよはまし敎へざりせばはま千鳥
ひとかたならぬあとをそれとも

教えてくださらなかったら、迷ってしまっただろう。浜千鳥のひととおりでないその跡を、それと見分けることもできずに。

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十六夜日記 - 冷泉為守

はるばるとゆくさき遠く慕はれて
いかにそなたの空をながめむ

はるばると行く先は遠く、母上が慕われてならず、これからどのような思いでそちらの方の空を眺めることだろう。

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十六夜日記 - 阿仏尼

つくづくと空なながめそこひしくば
道とほくともはやかへりこむ

じっと空を眺めたりするな。恋しいのならば、道は遠くとも早く帰って来よう。

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十六夜日記 - 源承

あだにのみ淚はかけじ旅ごろも
こゝろのゆきて立ちかへるほど

むだに涙をこぼしたりはするまい。旅衣を着て立った心が、行って帰って来るまでのあいだは。

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十六夜日記 - 慶融

立ちそふぞうれしかりける旅衣
かたみにたのむおやのまもりは

連れ立って旅立つのがうれしいことだ。たがいに頼みとする、親の守りは。

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十六夜日記 - 阿仏尼

君をこそ朝日とたのめふるさとに
のこるなでしこ霜にからすな

あなたをこそ朝日と頼みにする。都に残る撫子を、霜に枯らしてくれるな。

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十六夜日記

思ひおく心とゞめはふるさとの
しもにも枯れじやまとなでしこ

あなたが思い残していく、その心がとどまっているのだから、都の霜にも枯れはしないだろう、大和撫子は。

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十六夜日記 - 阿仏尼

さだめなき命は知らぬたびなれど
またあふ坂とたのめてぞゆく

定めない命がどうなるかもわからない旅ではあるけれど、また逢坂だと、また逢えると頼みにして行く。

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十六夜日記 - 阿仏尼

うちしぐれふるさと思ふ袖ぬれて
ゆくさきとほき野路のしの原

時雨が降り、都を思う袖が濡れて、行く先の遠い野路の篠原よ。

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十六夜日記 - 阿仏尼

いとゞなほ袖ぬらせとや宿りけむ
まなくしぐれのもる山にしも

いっそうその上に袖を濡らせというのだろうか、絶え間なく時雨の漏れる、その守山にほかならぬ所に宿をとったのだった。

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十六夜日記 - 阿仏尼

たび人はみなもろともに朝立ちて
こまうちわたす野洲の川ぎり

旅人は皆いっしょに朝立って、馬を打ちながら渡って行く、野洲の川霧よ。

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十六夜日記 - 阿仏尼

むすぶ手ににごるこゝろをすゝぎなば
うき世の夢やさめが井の水

すくい取る手の中で、濁った心をすすいだならば、憂き世の夢も覚めるだろうか。この醒が井の水よ。

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