古典和歌stream

十六夜日記 - 阿仏尼

あま小舟こぎ行くかたを見せじとや
浪にたちそふ浦のあさぎり

海人の小舟の漕いで行く方を見せまいというのか、波に立ち添う、浦の朝霧よ。

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十六夜日記 - 阿仏尼

立ちはなれ世もうき浪はかけもせじ
むかしの人のおなじ世ならば

都を立ち離れて、世も憂いというその憂き波を、身にかけることもなかっただろう。昔の人が同じ世に生きていたならば。

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十六夜日記

たびごろもなみだをそへてうつの山
しぐれぬひまもさぞしぐるらむ

旅衣に涙を添えて越えた宇津の山では、時雨の降らない間も、さぞ時雨れていたことだろう。

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十六夜日記

ゆくりなくあくがれ出でしいざよひの
月やおくれぬかたみなるべき

思いがけなくさまよい出た、あの十六夜の月こそが、後れずについて行く形見なのであろうか。

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十六夜日記 - 阿仏尼

めぐりあふ末をぞたのむゆくりなく
空にうかれしいざよひの月

めぐり逢う末を頼みにするのだ。思いがけなく空にさまよい出た、この十六夜の月は。

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十六夜日記

はるばると思ひこそやれたび衣
なみだしぐるゝほどやいかにと

はるばると思いやることだ。旅衣が涙に時雨れるほどは、いかばかりであろうかと。

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十六夜日記 - 阿仏尼

おもひやれ露もしぐれもひとつにて
山路わけこし袖のしづくを

思いやってください。露も時雨も一つになって、山路を分け越えてきた、この袖のしずくを。

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十六夜日記 - 為兼

ふるさとはしぐれに立ちしたびごろも
雪にやいとゞさえまさるらむ

都では時雨の中を発って行かれた旅衣が、いまは雪でますます冷えまさっていることだろうか。

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十六夜日記 - 阿仏尼

たびごろもうら風さえてかみな月
しぐるゝ雲にゆきぞ降りそふ

旅衣に浦風が冷え冷えと吹いて、神無月の時雨れる雲に、雪までが降り添うことだ。

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十六夜日記 - 阿仏尼

消えかへりながむる空もかきくれて
ほどは雲ゐぞ雪になりゆく

消え入るような思いで眺める空も一面に暗くなって、あなたとの隔たりは雲居ほども遠く、その空が雪になっていく。

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十六夜日記

ひとかたに袖やぬれましたび衣
たつ日をきかぬうらみなりせば

ひととおりに袖が濡れたであろうか。旅衣を裁つ、その旅立ちの日を聞かなかったという恨みだけであったならば。

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十六夜日記

かきくらし雪ふる空のながめにも
ほどは雲ゐのあはれをぞ知る

一面に暗くして雪の降る空を眺めるにつけても、隔たりが雲居ほども遠いことの、そのあわれを知るのだ。

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十六夜日記 - 阿仏尼

心からなにうらむらむたびごろも
たつ日をだにも知らずがほにて

ご自分の心から出たことなのに、何を恨んでおられるのだろう。旅衣を裁つ、その旅立ちの日さえも知らないふりをしておいて。

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十六夜日記 - 阿仏尼

夜もすがらなみだも文もかきあへず
いそこす風にひとりおきゐて

一晩じゅう、涙も拭いきれず、文も書ききれない。磯を越す風の中に、ひとり起きていて。

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十六夜日記 - 阿仏尼

いたづらにめかりしほやくすさびにも
戀しやなれし里のあま人

むなしく海松布を刈り、塩を焼くような慰みごとにつけても、恋しいことよ、慣れ親しんだ里のあま人が。

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十六夜日記

たまづさを見るに淚のかゝるかな
いそこす風はきくこゝちして

お手紙を見るにつけて涙がかかることよ。磯を越す風は、ほんとうに聞くような心地がして。

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