十六夜日記 - 阿仏尼
夏衣をもう早々と裁ち替えて、都の人はいまごろ待っていることだろう、山ほととぎすを。
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十六夜日記
草も木も、去年見たままに変わらないけれども、以前とは似ても似つかない心地ばかりがして。
人よりも心を尽くして待って、ほととぎすのただ一声を、今日ようやく聞いたことです。
忍び音は比企の谷で鳴いているというほととぎすよ、雲居に高く、いつになったら名のりを上げるのだろう。
どれほどのことであろう。子を思う鶴が飛び別れて、慣れない旅の空で鳴いていることだろう。
子を思えばこそ飛び別れてきたのだけれども、葦鶴が子を思う、その心のほうは、やはり悲しいのだ。
都まで語って聞かせるにも遠すぎる。思い寝の中に偲ぶ、昔の夢の名残を。
はかないことよ。旅寝の夢に迷い来て、覚めれば見えなくなってしまう、あの人の面影は。
東路の草の枕は遠いけれども、語ってくだされば近い、いにしえの夢よ。
どこから旅寝の床に通っていらっしゃるのだろう。思い置いていかれた露を尋ねて。
十六夜日記 - 冷泉為相
心だけは隔てていないとしても、旅衣のあなたとのあいだには山路が幾重にも重なっている、遠くの白雲よ。
恋い偲ぶ心が寄り添っているのだろうか。朝夕に行っては帰る、あの遠くの白雲には。
かりそめの草の枕で過ごされる夜な夜なを思いやるにつけても、私の袖は露に濡れたようになる。
秋の深い草の枕で、私こそ泣いているのだ。振り捨てて来てしまった、あの鈴虫の音を思って。
これを見たならばどれほど喜んだことかと思われる、あの人に代わって、声を上げて泣かずにはいられない。
十六夜日記 - 冷泉為守
立ち別れて旅立たれ、富士の煙をご覧になっても、なおどれほど心細さが添ったことでしょう。