古典和歌stream

十六夜日記 - 阿仏尼

わが子ども君につかへむためならで
わたらましやは關のふぢ川

わが子どもが主君にお仕えするためでなかったなら、渡ったりしようか、いや渡りはしなかっただろう、この関の藤川を。

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十六夜日記 - 阿仏尼

ひまおほき不破の關屋はこのほどの
時雨も月もいかにもるらむ

隙間の多い不破の関屋は、このごろの時雨も月の光も、どんなにか漏れていることだろう。

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十六夜日記 - 阿仏尼

たび人はみのうちはらふゆふぐれの
雨にやどかるかさぬひの里

旅人は蓑の雨を打ち払う、その夕暮れの雨に宿を借りる、笠縫の里よ。

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十六夜日記 - 阿仏尼

まもれたゞちぎりむすぶの神ならば
とけぬうらみに我まよはさで

ただ守ってください。契りを結ぶ結の神であるならば、解けない恨みの中に私を迷わせないで。

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十六夜日記 - 阿仏尼

かたぶちのふかき心はありながら
人めづゝみにさぞせかるらむ

片淵のように深い心はありながら、人目を包む堤にさぞ堰き止められていることだろう。

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十六夜日記 - 阿仏尼

かりの世のゆきゝと見るもはかなしや
身をうき舟を浮橋にして

仮のこの世の行き来と見るのもはかないことよ。わが身を憂い、浮く舟を浮橋にして渡っていくとは。

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十六夜日記 - 阿仏尼

一の宮名さへなつかしふたつなく
みつなきのりをまもるなるべし

一の宮という、その名までも慕わしい。二つもなく三つもない一乗の法を守っておられるのであろう。

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十六夜日記 - 阿仏尼

いのるぞよ我がおもふことなるみがた
かたひくしほも神のまにまに

祈ることだよ。私の思うことが成る、その鳴海潟の、潟を引いていく潮も神の御心のままであるように、私の願いも神の御心のままに。

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十六夜日記 - 阿仏尼

鳴海がた和歌のうら風へだてずば
おなじこゝろに神もうくらむ

鳴海潟と和歌の浦と、その浦風を隔てずにおられるならば、同じ心でこの神も歌を受け入れてくださるだろう。

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十六夜日記 - 阿仏尼

みつしほのさしてぞ來つるなるみがた
神やあはれとみるめたづねて

満ち潮が差してくるように、ここを目指してやって来たのだ、鳴海潟へ。神があわれと見てくださるだろうか、その見る目を尋ねて。

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十六夜日記 - 阿仏尼

雨かぜも神のこゝろにまかすらむ
我がゆくさきのさはりあらすな

雨も風も神の御心にまかせているのだろう。私の行く先にさしさわりをあらせないでほしい。

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十六夜日記 - 阿仏尼

濱千鳥なきてぞさそふ世の中に
あととめむとはおもはざりしを

浜千鳥が鳴いて誘っている。この世に跡を留めようなどとは思わなかったのに。

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十六夜日記 - 阿仏尼

こととはむはしと足とはあかざりし
わが住むかたのみやこ鳥かと

尋ねてみよう。嘴と脚とが赤い、その名残の尽きなかった、私の住む都のあの都鳥かと。

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十六夜日記 - 阿仏尼

はるばると二村山をゆき過ぎて
なほすゑたどる野べのゆふやみ

はるばると二村山を通り過ぎて、それでもまだ行く先をたどっている、野辺の夕闇の中を。

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十六夜日記 - 阿仏尼

さゝがにのくもであやふき八橋を
ゆふぐれかけて渡りぬるかな

蜘蛛の手のように危うく分かれた八橋を、夕暮れにかけて渡ってしまったことよ。

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十六夜日記 - 阿仏尼

しぐれけり染むるちしほのはてはまた
紅葉の錦いろかへるまて

時雨が降ったのだな。幾度も染め重ねたそのはてには、紅葉の錦の色までがまた変わるほどに。

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