万葉集 - 余明軍
いつまでも長くお仕えしようと思っていたわが君がいらっしゃらないので、心の張りもなくなってしまった。
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幼子が這いまわって泣くように、朝も夕も、声を上げて泣いてばかりいる。わが君がいなくなって。
万葉集 - 県犬養人上
いくら見ても見飽きることのなかったわが君が、黄葉が散っていくように世を去ってしまわれたので、悲しいことであるよ。
万葉集 - 大伴坂上郎女
引き留めることのできない命であったので、住み慣れた家を出て、雲に隠れるように亡くなってしまった。
万葉集 - 大伴家持
これからは秋風が寒く吹くだろうに、どのようにしてひとりで長い夜を寝たらよいのだろうか。
万葉集 - 大伴書持
長い夜をひとりで寝るのかとあなたが言うので、亡くなった人のことが思われてならない。
秋になったらこれを見ながら私をしのんでくださいと、妻が植えた庭のなでしこが咲いたことだ。
この世は無常なものだと知っているのに、秋風が寒いので、亡き人をしのんでしまうことだ。
死ぬ時はほかにいつでもあるだろうに、心痛むことに、去って行くわが妻よ。幼い子を残して。
妻が出て行く道を知っていたならば、前もって、妻を引き留める関所でも置いておいたのに。
妻が見た庭に花が咲いて、時は過ぎてしまった。私の泣く涙はまだ乾かないのに。
こうなるばかりの定めであったのに、妻も私も、千年も続くかのように互いを頼みにしていたことだ。
家を離れて去って行く妻を引き留めることができず、山に隠して葬ってしまったので、心の張りもない。
世の中とはいつもこのようなものだと、一方ではわかっているけれど、痛む心はこらえきれないことだ。
佐保山にたなびく霞を見るたびに、妻を思い出して、泣かない日はない。
昔こそよそごととして見ていたけれど、妻の眠る墓所と思うと、いとしい佐保山であることよ。