万葉集 - 安都扉娘子
空を渡る月の光の下で、ただひと目逢っただけの人が、夢に見えることだ。
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万葉集 - 丹波大女娘子
鴨が遊ぶこの池に木の葉が落ちて浮いているように、浮ついた心で私は思っているのではないのに。
三輪の神官が大切に祭っている杉に、手を触れた罪だろうか、あなたに逢いにくいのは。
垣根のように取り巻く人の噂を聞いて、あなたの心が揺れ動き、逢ってくれないこのごろだ。
万葉集 - 大伴家持
心の中では思い続けているけれど、逢う手立てがないので、よそながら見るばかりで、私は嘆いている。
千鳥の鳴く佐保川の渡り場の清らかな瀬を、馬に乗って渡り、いつあなたのもとへ通えるだろうか。
夜も昼も区別なく私が恋い慕う心は、もしかしたらあなたの夢に見えただろうか。
冷淡にしているであろう人を、片思いで私は思っているので、つらいことだ。
思いがけなく、あの人の微笑みを夢に見て、心の中で燃え続けていることだ。
立派な男子だと思っている私が、これほどまでにやつれにやつれて、片思いをすることになろうとは。
心が砕けるほどに、これほど私が恋い慕っていることを、あの人は知らないでいるのだろうか。
万葉集 - 大伴坂上郎女
山里に住んでおりますので、風雅の心得もなく、私のすることをおとがめにならないでください。
これほど恋い続けているくらいなら、いっそ岩や木にでもなってしまえばよかったのに。物思いなどせずに。
朝の寝乱れた髪のように思い乱れて、これほどあなたが恋い慕うからこそ、私の夢にあなたが見えたのだ。
かいつぶりが潜る池の水よ、もし心があるならば、私が大君をお慕いする心をお示ししておくれ。
離れた所にいて恋い慕っているくらいなら、大君のお住まいの池に住むという鴨であればよかったのに。