平家物語
日が暮れて行き着けず、木の下陰を宿とするならば、花が今宵の主人ということになるだろうか。
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私の恋は、細い谷川に架かった丸木橋のようだ。踏み返されて落ち、袖が濡れることだ。
ただ頼りになさい。細い谷川の丸木橋も、幾度も踏みかかってゆけば、落ちないことがあろうか。
どこで逢えるとも知れない、その逢瀬を待ちながら書き置くこの跡を、形見と思って見てくれ。
涙川に憂き名を流す身であっても、もう一度だけ、逢う機会がほしいものだ。
あなたゆえに私もまた憂き名を流すとしても、川底の水屑となって、ご一緒しよう。
逢うことも、露のようなこの命も、どちらも今宵かぎりということになるのだろうか。
これが最後だと言って立ち別れるのだから、露のようなこの身は、あなたより先に消えてしまいそうだ。
旅の空の下、埴生の小屋の気詰まりさに、故郷がどれほど恋しくおありでしょう。
故郷も恋しくはない。旅の空にあっても同じことだ、都とて終の住みかではないのだから。
どうしよう。都の春も惜しいけれど、住み慣れた東国の花は、もう散っているだろうか。
惜しくもない命ではあるけれど、今日まで生き永らえたおかげで、つれない甲斐の白根を見ることができた。
剃るまでは恨んでいたけれど、まことの道に入ってくれたのは嬉しい。
剃ったからといって、何を恨むことがあろうか。引きとどめられるような心ではないのだから。
君がお住まいになるのだから、ここもまた雲居の月ではあるけれど、それでもなお恋しいのは都であった。
眺めていると、涙に濡れる袂に月が宿っていた。月よ、雲の上の昔を語ってくれ。