万葉集
潜って漁をする海人は祈りの言葉を口にするけれども、海の神の心を得られないので、見えるとは言わないことだ。
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天雲のたなびく山が隠れているように、人に隠している私の心の奥の思いを、木の葉は知っているだろう。
いくら見ても見飽きない人国山の木の葉を、私は自分の心から慕わしく思っている。
この山の黄葉の下に咲く花を、私はほんのわずかに見ただけで、いっそう恋しくなってしまった。
この川を通って舟は行けそうだというけれど、渡り瀬ごとに見張る人がいて。
大海の様子をうかがって船が待つ港で、もし何か事が起きたら、どこを通ってあなたは私を連れて難を逃れるのだろうか。
風が吹いて海が荒れても、明日にしようと言うならば、長く待つことになるだろう。あなたの思うとおりに。
雲に隠れる小島の神が恐れ多いので、目にこそ隔たっているが、心まで隔てていようか。
橡染めの衣は気安くて面倒がないと人が皆言ったときから、着てみたいと思われてならない。
いいかげんに私が思っているのなら、下に着て慣れ親しんだ衣を、取って上に着たりするだろうか。
紅の濃く染めた衣を下に着ていて、それを上に取って着たならば、人が噂を立てるだろうか。
橡染めの、ほどいて洗い直した衣が、不思議にもとりわけ着たく思われるこの夕べであることよ。
橘の島に住んでいるので、川が遠くて、布を晒さずに縫った私の下着であることよ。
河内の女が手で染めた糸を繰り返し繰るように、繰り返し思う。片糸ではあるけれど、切れようなどと思うだろうか。
海の底に沈んでいる白玉を、風が吹いて海が荒れようとも、取らずにはおくまい。
水底が清らかなので沈んでいるのが見える玉を見たいと思って、千度も頼んだことだ、潜って漁をする海人に。