万葉集
三国山の梢に住んでいるむささびが鳥を待つように、私はあなたを待ちながら痩せてしまうだろう。
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岩倉の野から秋津へと立ちわたる雲ででもあろうか、そうではないのに、どうして時を待っていられようか。
天の雲に近く光って鳴る雷のように、逢えば恐れ多く、逢わなければ悲しいことだ。
ひどく降ったわけでもない雨なのに、にわたずみよ、ひどく流れて行くな。人に知られてしまうから。
雨の中で着たわけでもないのに、不思議なことに、私の袖は乾く時がないことよ。
空を渡って行く月の男を、毎夕、目には見ているけれども、近寄るすべもない。
春日山は山が高いらしい。岩の上の菅の根を見ようとするのに、月の出を待ちかねることだ。
闇の夜はつらいものなのに。いつになったらと私が待っている月も、早く照ってくれないものか。
朝霜のように消えやすい命であるのに、ほかの誰のために千年も生きたいと私が思うだろうか、そうは思わないのに。
大和の宇陀の赤土の赤い色が衣に付いたならば、そのことでも人は私のことを噂に立てるだろうか。
木綿を懸けて祭る三諸の神のように神々しくして、身を慎んでいるのではない。人目が多いからこそなのだ。
木綿を懸けて祭っているこの神の社さえも越えてしまいそうに思われることだ。恋しさの激しさに。
絶えず流れてゆく明日香川が淀んだならば、何かわけでもあるかのように人が見るだろうに。
明日香川の瀬ごとに美しい藻は生えているけれど、しがらみがあるので、靡き合わないことよ。
広瀬川は袖が浸るほどの浅さなのに、どうして心を深くして私は思っているのだろう。
泊瀬川を流れる水の泡が絶えたならばこそ、私の思う心を遂げられないとも思おうが。