古典和歌stream

源氏物語 - 紫式部

かざしける心ぞあだにおもほゆる
八十氏人になべて逢ふ日を

葵を挿していたその心こそ浮ついたものに思われる。大勢の人が誰彼かまわず逢う日だというのに。

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源氏物語 - 紫式部

悔しくもかざしけるかな名のみして
人だのめなる草葉ばかりを

悔しくも葵を挿してしまったことよ。名ばかりで、人を頼らせておくだけの草葉にすぎないものを。

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源氏物語 - 紫式部

袖濡るる恋路とかつは知りながら
おりたつ田子のみづからぞ憂き

袖が濡れる恋の道だと一方では知りながら、その泥に下り立つ田人である自分こそがつらい。

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源氏物語 - 紫式部

浅みにや人はおりたつわが方は
身もそぼつまで深き恋路を

あなたは浅い所に下り立っているのだろうか。私のほうは、身までびしょ濡れになるほど深い恋の道なのに。

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源氏物語 - 紫式部

嘆きわび空に乱るるわが魂を
結びとどめよしたがへのつま

嘆きに耐えかねて空にさまよい出るわたしの魂を、下前の褄を結んで留めてください。

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源氏物語 - 紫式部

のぼりぬる煙はそれとわかねども
なべて雲居のあはれなるかな

立ちのぼった煙がどれとも見分けはつかないけれど、空一面がしみじみと胸に迫ることよ。

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源氏物語 - 紫式部

限りあれば薄墨衣浅けれど
涙ぞ袖を淵となしける

定めがあるので喪服の色は薄いけれど、涙が袖を深い淵にしてしまったことだ。

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源氏物語 - 紫式部

人の世をあはれと聞くも露けきに
後るる袖を思ひこそやれ

人の世のはかなさを伝え聞くにつけても涙がちであるのに、後に残された方の袖のことを思いやっております。

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源氏物語 - 紫式部

とまる身も消えしもおなじ露の世に
心置くらむほどぞはかなき

残っている身も消えた人も同じ露のようなこの世で、互いに隔てを置いているのは、はかないことです。

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源氏物語 - 紫式部

雨となりしぐるる空の浮雲を
いづれの方とわきて眺めむ

雨となって時雨れている空の浮雲を、どれがその人だと見分けて眺めればよいのだろう。

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源氏物語 - 紫式部

見し人の雨となりにし雲居さへ
いとど時雨にかき暮らすころ

親しんだ人が雨となってしまった空までが、いっそう時雨に暗く閉ざされているこのごろだ。

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源氏物語 - 紫式部

草枯れのまがきに残る撫子を
別れし秋のかたみとぞ見る

草の枯れた垣根に残っている撫子を、別れた秋の形見と見ることだ。

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源氏物語 - 紫式部

今も見てなかなか袖を朽たすかな
垣ほ荒れにし大和撫子

今こうして見ても、かえって袖を涙で朽ちさせることだ。垣根の荒れてしまった大和撫子を。

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源氏物語 - 紫式部

わきてこの暮こそ袖は露けけれ
もの思ふ秋はあまた経ぬれど

とりわけこの夕暮れこそ袖が涙に濡れることだ。物思いに沈む秋はいくつも過ごしてきたけれど。

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源氏物語 - 紫式部

秋霧に立ちおくれぬと聞きしより
しぐるる空もいかがとぞ思ふ

秋霧の中で先立たれなさったと聞いてからは、時雨れる空をご覧になるお心はいかばかりかと思っております。

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源氏物語 - 紫式部

なき魂ぞいとど悲しき寝し床の
あくがれがたき心ならひに

亡くなった人の魂がいっそう悲しく思われる。かつて共に寝た床を離れがたく思う、その心の習いのせいで。

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