古典和歌stream

源氏物語 - 紫式部

君なくて塵つもりぬる常夏の
露うち払ひいく夜寝ぬらむ

あなたがいなくなって塵の積もった床の上で、露を払いながら幾夜を寝ずに過ごしたことだろう。

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源氏物語 - 紫式部

あやなくも隔てけるかな夜をかさね
さすがに馴れし夜の衣を

わけもなく隔てを置いていたことだ。幾夜も重ねて、さすがに馴れ親しんできた夜の衣であるのに。

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源氏物語 - 紫式部

あまた年今日改めし色衣
着ては涙ぞふる心地する

幾年もの間、今日という日に新しく改めてきた晴れ着だが、着ると涙が降るような心地がする。

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源氏物語 - 紫式部

新しき年ともいはずふるものは
ふりぬる人の涙なりけり

新しい年だともかまわず降りつづけるものは、年老いた者の涙なのだった。

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源氏物語 - 紫式部

神垣はしるしの杉もなきものを
いかにまがへて折れる榊ぞ

この神垣にはそれと示す杉もないのに、どう見間違えて榊を折ってこられたのですか。

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源氏物語 - 紫式部

少女子があたりと思へば榊葉の
香をなつかしみとめてこそ折れ

神に仕える少女のいるあたりと思うので、榊の葉の香をなつかしんで、それをたよりに折ったのです。

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源氏物語 - 紫式部

暁の別れはいつも露けきを
こは世に知らぬ秋の空かな

明け方の別れはいつも涙がちなものだが、これはこの世に知らないほどの秋の空であることよ。

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源氏物語 - 紫式部

おほかたの秋の別れも悲しきに
鳴く音な添へそ野辺の松虫

ただでさえ秋の別れは悲しいのに、鳴き声を添えないでほしい。野辺の松虫よ。

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源氏物語 - 紫式部

八洲もる国つ御神も心あらば
飽かぬ別れの仲をことわれ

この国土を守る国つ神にも心があるのなら、名残の尽きないこの別れの仲を裁いてほしい。

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源氏物語 - 紫式部

国つ神空にことわる仲ならば
なほざりごとをまづや糾さむ

国つ神が空の上から裁く仲だというのなら、まずはそのいい加減な言葉のほうを糾されるでしょう。

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源氏物語 - 紫式部

そのかみを今日はかけじと忍ぶれど
心のうちにものぞ悲しき

昔のことを今日は口にすまいとこらえているけれど、心のうちではやはり悲しく思われる。

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源氏物語 - 紫式部

振り捨てて今日は行くとも鈴鹿川
八十瀬の波に袖は濡れじや

振り捨てて今日は行かれるとしても、鈴鹿川の多くの瀬の波に、袖は濡れないでしょうか。

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源氏物語 - 紫式部

鈴鹿川八十瀬の波に濡れ濡れず
伊勢まで誰れか思ひおこせむ

鈴鹿川の多くの瀬の波に濡れようと濡れまいと、伊勢まで誰が思いを寄せてくださるでしょうか。

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源氏物語 - 紫式部

行く方を眺めもやらむこの秋は
逢坂山を霧な隔てそ

去っていく方角を眺めやりたい。この秋だけは、逢坂山を霧で隔てないでほしい。

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源氏物語 - 紫式部

蔭ひろみ頼みし松や枯れにけむ
下葉散りゆく年の暮かな

蔭が広いと頼りにしていた松は枯れてしまったのだろうか。下葉が散っていく年の暮であることよ。

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源氏物語 - 紫式部

さえわたる池の鏡のさやけきに
見なれし影を見ぬぞ悲しき

一面に凍りついた池は鏡のように澄んでいるのに、見慣れた姿が映らないのが悲しい。

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