新古今和歌集 - 寂然
吹く風に花橘が香っているのだろうか。昔が思い出される今日の庭であることよ。
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闇の深い木の下ごとに約束を残して、朝に立ちのぼる霧のように去っていった、その後の露けさよ。
今日も過ぎてしまった、命もそのように減ってゆくのだと気づかせる、夕暮れの鐘の音が悲しい。
新古今和歌集 - 素覚
草の深い狩場の野を出てきて、仲間を見失った鹿が鳴いているのが聞こえる。
世を背いて出家しなければ、いったいどの世でめぐり逢って、私があなたを思っていたのだと知ってもらえようか。
新古今和歌集 - 源季広
寄り合っても峰で別れてゆく白雲が峰にかかるように、このような別れのあるこの世がいとわしいことよ。
名に聞くあなたのもとへ、いつ行くことができるのだろうか。生の松のように、心を尽くして待っていてくださるだろうに。
別れてしまったその面影が恋しいので、せめて夢にでも現れてほしい、山の端の月よ。
海の深みに沈むような漁をするのではなく、保つかいのある仏の法をこそ求めよ。
浮草のたった一葉であっても、磯陰に隠れているものに思いをかけるな、沖の白波よ。
そうでなくてさえ罪の重い身の上に、夜の衣の褄を重ねるように、自分の妻ではない女と契りを重ねてはならない。
花の下での露ほどのはかない情けは、長くは続くまい。酔えと勧めてくれるな、春の山風よ。
新古今和歌集 - 二条院讃岐
つらいことを、やはり前世の報いだと思わなかったならば、どれほどこの世を恨みぬいたことだろう。
新古今和歌集 - 藤原俊成
渡すべき人の数にも限りがない橋の柱を、どのように立てた誓いなのであろうか。
今こそ、これなのだ。入日を見るたびに思い描いてきた、阿弥陀仏の御国の夕暮れの空は。
昔聞いた尾上の鐘の音に似ていることよ。極楽の岸に打ち寄せる波の、暁の響きは。