- 表題
- -
- 拾遺和歌集
拾遺和歌集 - よみ人しらず
春の野に生ふるなきなのわびしきは
身をつみてだに人の知らぬよ
春の野に生える菜ではないが、身に覚えのない浮き名が立つのがつらいのは、我が身をつねってみてさえ、人がこの痛みを知ってくれないことだ。
拾遺和歌集 - よみ人しらず
なき事をいはれの池の浮きぬなは
くるしきものは世にこそありけれ
根も葉もないことを言われるのは、磐余の池に浮くぬなわを繰るようなもので、苦しいものはこの世にこそあったのだ。
拾遺和歌集 - 柿本人麻呂
竹の葉に置きゐる事のまろびあひて
ぬるとはなしに立つ我が名かな
竹の葉に置いているものが転がり合って寄り添うように、共に寝たというわけでもないのに、立ってしまう私の浮き名であることよ。
拾遺和歌集 - よみ人しらず
あぢきなや我が名はたちて唐衣
身にもならさでやみぬべきかな
ああ、どうにもならないことだ。私の浮き名は立って、唐衣を裁っても身に着け慣らさないように、あの人と馴れ親しむこともなく終わってしまいそうだ。
拾遺和歌集 - よみ人しらず
唐衣我は刀の触れなくに
まづたつものはなき名なりけり
唐衣に刀を触れてもいないのに裁たれるように、私はあの人に触れてもいないのに、まず立つものは身に覚えのない浮き名であった。
拾遺和歌集 - よみ人しらず
夢かとも思ふべけれど寝やはせし
何ぞ心に忘れがたきは
夢だったのかとも思ってよいはずだが、私は眠ったりしただろうか、いや眠ってはいない。何なのだろう、心に忘れがたいのは。