- 表題
- -
- 千載和歌集
千載和歌集 - 祝部成仲
君恋ふる涙時雨と降りぬれば
しのぶの山も色づきにけり
あなたを恋い慕って流す涙が時雨となって降ったので、しのぶの山も紅葉して色づいてしまった。忍んでいた恋も色に現れてしまった。
千載和歌集 - 常陸
いかにせむしのぶの山の下紅葉
しぐるるままに色のまさるを
どうしたらよいのだろう。しのぶの山の下葉の紅葉が、時雨が降るにつれて色を深めていくように、忍ぶ恋も涙にぬれるたびに表に現れていくのを。
千載和歌集 - 藤原隆房
同じくは重ねてしほれぬれ衣
さても干すべきなき名ならじを
同じことならば、いっそ重ねてぐっしょり濡れてしまえ、この濡れ衣よ。そのままにしておいても乾かせるような、根も葉もない噂ではないだろうから。
千載和歌集 - よみ人しらず
流れてもすすぎやするとぬれ衣
人は着すとも身には馴らさじ
時が流れるうちに洗い清められることもあるかと思うので、濡れ衣を人が着せようとも、我が身に馴染ませることはするまい。
千載和歌集 - 藤原季能
つれなさに言はで絶えなんと思ふこそ
逢ひ見ぬ先の別れなりけれ
あの人のつれなさゆえに、思いを打ち明けずにこのまま縁を絶ってしまおうと思うことこそが、逢わないうちの別れというものであった。
千載和歌集 - 藤原季経
思ひ出づるその慰めもありなまし
逢ひ見て後のつらさなりせば
もし契りを結んだ後のつらさであったなら、逢った時のことを思い出すという慰めもあっただろうに。まだ一度も逢えないままのつらさなので、それもない。
千載和歌集 - 藤原俊成
照射する端山が裾の下露や
入るより袖はかくしをるらん
照射の狩りをする端山の裾野の下露のせいだろうか。山に分け入るやいなや袖がこれほど濡れしおれるのは。恋の道に入ったばかりで、早くも袖が涙に濡れることだ。
千載和歌集 - 藤原俊成
いかにせん室の八島に宿もがな
恋の煙を空にまがへん
どうしたらよいのだろう。室の八島に宿があればよいのに。そうすれば、恋の思いから立つ煙を、室の八島の煙にまぎらわせて空に紛れさせよう。
千載和歌集 - 藤原公実
思ひ余り人に問はばや水無瀬川
むすばぬ水に袖は濡るやと
思いがあふれて、人に尋ねてみたいものだ。水の無い水無瀬川の、手にすくってもいない水に、袖が濡れるということがあるのかと。