新古今和歌集 - 藤原俊忠
そうでなくてさえ露の多い嵯峨の野辺にやって来て、亡き人の昔の跡で、露に濡れた草のようにしおれてしまったことだ。
詳細を見る
新古今和歌集 - 藤原実定
その悲しさは、秋の嵯峨野で鳴くきりぎりすのようで、今もなお住み慣れた家で、声をあげて泣いているのであろうか。
新古今和歌集 - 俊成卿女
今となってはもう、つらい世の定めとして、この嵯峨の野辺こそを、露のように母が消え果てた跡としてしのぼう。
新古今和歌集 - 藤原定家
ほんのしばらくの間も、草葉の露も私の涙もとどまることがない。亡き人を恋い慕うこの家に吹く秋風のために。
新古今和歌集 - 藤原秀能
せめて袖の露だけでも、今は亡き父の形見としている藤衣であるのに、その袖をむやみに吹いてゆく嵐であることよ。
新古今和歌集 - 殷富門院大輔
秋の深まった夜の寝覚めに、どのように思い出していることか。はかなく見えた、あの春の夜の夢を。
新古今和歌集 - 源通親
見たあの夢を忘れる時はないけれども、秋の寝覚めは、おっしゃるとおり、本当に悲しいことだ。
新古今和歌集 - 藤原実家
馴れ親しんで過ごした秋の、夜更けの寝床は昔のままであるのに、心の底に残るあの夢こそが悲しい。
新古今和歌集 - 西行
朽ちることのないその名だけをこの世に留め置いて、あの人は去った。枯野の薄を、その形見として見ることだ。
新古今和歌集 - 慈円
ふるさとを恋い慕う涙なのであろうか。ひとりで行く、友もいない山の道端の芝草に置く露は。
新古今和歌集 - 藤原俊成
つらいこの世にはもういるまいと思う今、吹きつける嵐の山風に、これが山の暮らしに馴れてゆく始めなのであろうか。
まれに来て聞く一夜でさえ悲しいこの松風を、亡き人は苔の下で、絶えず聞いているのであろうか。
新古今和歌集 - 源雅実
物思いをしていると、色のない風というものもなかったのだ。身にしみる秋に慣らされた心の習いのままに。
住み慣れたふるさとに別れた秋から数えてみると、八年になった。夜明けの空に残る有明の月よ。
新古今和歌集 - 能因
命があるので、今年の秋も月は見た。けれども、死に別れたあの人に逢う夜はないことだ。
新古今和歌集 - 藤原公任
今日来なかったら、見ないままで終わってしまっただろうか。山里の紅葉も人の命も、移ろって定めのないこの世にあって。