- 表題
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- 千載和歌集
千載和歌集 - 寂蓮
寂しさを憂き世にかへて忍ばずは
ひとり聞くべき松の風かは
この寂しさを、憂き世のつらさと引き換えにして耐え忍ぶのでなければ、ひとりで聞いていられるような松風の音であろうか、いや、とても聞いてはいられない。
千載和歌集 - 殷富門院大輔
つくづくと思へば悲し暁の
寝覚めも夢を見るにぞありける
つくづくと考えてみると悲しいことだ。暁に目を覚ましているこのひとときも、実はこの世という夢を見ているのであったことだ。
千載和歌集 - 西住
まどろみてさてもやみなばいかがせん
寝覚めぞあらぬ命なりける
うとうとと眠って、そのまま命が絶えてしまったならどうしようか。こうして寝覚めることこそが、あるとも思えない命がまだ続いていることの証であったのだ。
千載和歌集 - 二条太皇太后宮式部
今はとてかきなすことの果ての緒に
心細くもなりまさるかな
これが最後と、出家しようとする人がかき鳴らす琴の、最後の弦の音に、俗世の事の果てを思って、ますます心細くなっていくことだ。
千載和歌集 - 大江公景
鳥辺山君尋ぬとも朽ち果てて
苔の下には答へざらまし
もし私が死んでいたなら、鳥辺山にあなたが訪ねて来てくれても、私はすっかり朽ち果てて、苔の下からは答えることもなかっただろう。
千載和歌集 - 兼覚
分けわびて厭ひし庭の蓬生も
かれぬと思ふはあはれなりけり
分けて通るのに難儀して嫌っていた庭の蓬の茂みも、すっかり枯れて、人の訪れも離れてしまったと思うと、しみじみと哀れなことだ。
千載和歌集 - 寂蓮
世の中の憂きは今こそ嬉しけれ
思ひ知らずは厭はましやは
世の中のつらさは、今となってはかえってうれしいことだ。そのつらさを思い知らなかったならば、世を厭うことなどあっただろうか、いや、なかっただろう。
千載和歌集 - 藤原俊成
世の中よ道こそなけれ思ひいる
山の奥にも鹿ぞ鳴くなる
ああ、この世の中よ。憂さから逃れる道などないのだ。思いつめて分け入ったこの山の奥にも、鹿が悲しげに鳴いているのが聞こえる。