万葉集
朝曇りして日が隠れてゆくと、皇子がお立ちになった庭の島に下りて座り、嘆いたことだ。
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朝日の照る島の宮殿に、ひっそりと人の気配もしないので、心の底から悲しい。
真木の柱のように太くしっかりとした心を持っていたけれども、この私の心を鎮めることができない。
毛皮の衣を着る季節を待ち受けて、狩りにお出かけになった宇陀の大野は、これからもしのばれることだろう。
朝日の照る佐田の岡辺で鳴く鳥のように、夜泣きをくり返している、この一年の間を。
農夫たちが昼となく夜となく行き来する道を、私はすべて宮へ通う道にしている。
万葉集 - 柿本人麻呂
袖を交わして共寝をしたあなたは、越智野を過ぎて行ってしまった。また逢うことがあろうか、いやもう逢えない。
明日香川にしがらみを渡してせき止めていたならば、流れる水も穏やかに淀んでいただろうか。
明日香川の名のように、明日にもまたお会いできると思うからだろうか、我が大君の御名を忘れることができない。
天をお治めになる身となってしまわれた君のために、月日の経つのも分からずに恋い慕い続けることだ。
埴安の池の堤に囲まれて流れ出る所のない沼のように、これからの行く先も分からずに、舎人たちは途方に暮れている。
万葉集 - 桧隈女王
哭沢の神社に神酒の甕を据えて祈ったけれども、我が大君は天をお治めになる身となってしまわれた。
万葉集 - 穂積皇子
降る雪よ、たくさんは降らないでくれ。吉隠の猪養の岡が、行く手をふさぐ関となってしまうだろうから。
万葉集 - 置始東人
大君は神でいらっしゃるので、天の雲が幾重にも重なる、その下に隠れておしまいになった。
楽浪の志賀のさざ波がしきりに寄せるように、いつまでも変わらずにと、君はしきりに思っておられたことだ。
秋の山の紅葉が茂っているので、道に迷ってしまった妻を探し求めようにも、その山道が分からない。