古典和歌stream

源氏物語 - 紫式部

思ふとも君は知らじなわきかへり
岩漏る水に色し見えねば

どれほど思っていても、あなたはお気づきにならないでしょう。湧き返って岩から漏れ出る水には、色というものが見えないのですから。

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源氏物語 - 紫式部

ませのうちに根深くうゑし竹の子の
おのが世々にや生ひわかるべき

垣根の内に根深く植えた竹の子も、それぞれの世を持って、ここから生い別れてゆくのだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

今さらにいかならむ世かわか竹の
おひはじめけむ根をばたづねん

今さら、どのような機会に、若竹が生えはじめたその根を、生みの親を訪ねてゆくことがありましょうか。

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源氏物語 - 紫式部

橘のかをりし袖によそふれば
かはれる身ともおもほえぬかな

橘の香りがした昔の人の袖に、あなたを比べてみると、別の人であるとも思われないことだ。

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源氏物語 - 紫式部

袖の香をよそふるからに橘の
みさへはかなくなりもこそすれ

袖の香を私になぞらえられるというだけで、橘の実のようなこの身までも、はかなく消えてしまいはしないでしょうか。

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源氏物語 - 紫式部

うちとけてねもみぬものを若草の
ことあり顔にむすぼほるらむ

打ち解けて共に寝たわけでもないのに、どうして若草のようなあなたは、何かあったかのような顔をしてふさぎこんでいるのだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

なく声もきこえぬ虫の思ひだに
人の消つにはきゆるものかは

鳴く声も聞こえない虫、すなわち蛍の火でさえ、人が消そうとして消えるものだろうか。まして私の思いは消えはしない。

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源氏物語 - 紫式部

こゑはせで身をのみこがす螢こそ
いふよりまさる思ひなるらめ

声も立てずにただ身を焦がしている蛍のほうこそ、口に出して言う人よりも、思いは深いのでしょう。

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源氏物語 - 紫式部

今日さへやひく人もなき水隠れに
生ふるあやめのねのみなかれん

今日という節句の日にさえ、引いてくれる人もない水の底に生えている菖蒲の根のように、私はただ声をあげて泣くばかりなのだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

あらはれていとど浅くも見ゆるかな
あやめもわかずなかれけるねの

水の上に現れて、いっそう浅く見えることです。物の区別もつかぬまま流されて泣いておられたという、その根、その音は。

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源氏物語 - 紫式部

その駒もすさめぬ草と名にたてる
汀のあやめ今日やひきつる

馬さえ食べようとしない草だと評判の、汀の菖蒲であるわたくしを、今日はお引き立てくださったのでしょうか。

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源氏物語 - 紫式部

にほどりに影をならぶる若駒は
いつかあやめにひきわかるべき

鳰鳥のように影を並べる若駒である私が、いつあやめであるあなたから引き分かれることがありましょうか。

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源氏物語 - 紫式部

思ひあまり昔のあとをたづぬれど
親にそむける子ぞたぐひなき

思いあまって昔の物語の跡をたずねてみたけれど、親にそむいた子というのは、他に例のないことだ。

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源氏物語 - 紫式部

ふるき跡をたづぬれどげになかりけり
この世にかかる親の心は

古い物語の跡をたずねてみましたが、なるほど本当にございませんでした。この世に、このような親の心というものは。

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源氏物語 - 紫式部

なでしこのとこなつかしき色を見ば
もとの垣根を人やたづねむ

撫子の、いつまでも心惹かれる色を見たなら、その花がもとは誰の垣根に咲いていたのかと、人は尋ね求めるだろう。

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源氏物語 - 紫式部

山がつの垣ほに生ひしなでしこの
もとの根ざしをたれかたづねん

山賤の垣根に生えていた撫子の、もとの根の在りかなど、いったい誰が尋ねてくれましょうか。

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