古典和歌stream

源氏物語 - 紫式部

きてみればうらみられけり唐衣
かへしやりてん袖をぬらして

着てみればかえって恨みの心がわいてきた。この唐衣は裏を返してお返ししてしまいたい、涙で袖を濡らしながら。

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源氏物語 - 紫式部

かへさむといふにつけてもかたしきの
夜の衣を思ひこそやれ

返そうとおっしゃるにつけても、衣を片敷いてお過ごしになる独り寝の夜が、思いやられることです。

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源氏物語 - 紫式部

うす氷とけぬる池の鏡には
世にたぐひなきかげぞならべる

薄氷がとけて鏡のようになった池の面には、世に類のない私たちの姿が並んで映っていることだ。

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源氏物語 - 紫式部

くもりなき池の鏡によろづ代を
すむべきかげぞしるく見えける

曇りのない池の鏡に、万代にわたって共に住み続けるはずの二人の姿が、はっきりと映って見えたことだ。

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源氏物語 - 紫式部

年月をまつにひかれて経る人に
けふうぐひすの初音きかせよ

年月を、小松に、いや姫君に心をひかれて待ちながら過ごしてきた者に、今日は鶯の初音を、年頭の初便りを聞かせてください。

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源氏物語 - 紫式部

ひきわかれ年は経れども鶯の
巣だちし松の根をわすれめや

引き別れて年は経ってしまっても、鶯である私が、巣立った松の根、すなわち母君のことを忘れましょうか、いえ忘れはしません。

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源氏物語 - 紫式部

めづらしや花のねぐらに木づたひて
谷のふる巣をとへるうぐひす

めずらしくうれしいことだ。花の宿りから木づたいに飛んできて、谷の古巣を訪ねてくれた鶯よ。

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源氏物語 - 紫式部

ふるさとの春の梢にたづね来て
世のつねならぬはなを見るかな

昔なじみの里の春の梢を訪ねて来て、世にまたとない花を、いや鼻を見ることだ。

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源氏物語 - 紫式部

風吹けば波の花さへいろ見えて
こや名にたてる山ぶきの崎

風が吹くと、波に映った花の色までも見えて、ここが名高い山吹の崎なのだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

春の池や井手のかはせにかよふらん
岸の山吹そこもにほへり

この春の池は、井手の川瀬に通じているのだろうか。岸の山吹が、水の底にまで色づいて映っている。

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源氏物語 - 紫式部

亀の上の山もたづねじ舟のうちに
老いせぬ名をばここに残さむ

亀の背に載っているという蓬莱の山を訪ねる必要もない。この舟の中で、老いることのないという評判を、ここに残そう。

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源氏物語 - 紫式部

春の日のうららにさして行く舟は
棹のしづくも花ぞちりける

春の日がうららかに射す中を、棹をさして進んで行く舟は、棹からこぼれ落ちるしずくまでも、花が散っているようであることよ。

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源氏物語 - 紫式部

むらさきのゆゑに心をしめたれば
ふちに身なげん名やはをしけき

紫のゆかりの人ゆえに心を染めてしまったのだから、藤の淵に身を投げたと評判が立とうとも、何の惜しいことがあろうか。

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源氏物語 - 紫式部

ふちに身を投げつべしやとこの春は
花のあたりを立ちさらで見よ

淵に身を投げるほどのことができるかどうか、この春は花のあたりを立ち去らずに見ていらっしゃい。

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源氏物語 - 紫式部

花ぞののこてふをさへや下草に
秋まつむしはうとく見るらむ

花園の胡蝶までも、下草の蔭で秋を待っている松虫のような貴女は、疎ましいものとご覧になるのでしょうか。

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源氏物語 - 紫式部

こてふにもさそはれなまし心ありて
八重山吹をへだてざりせば

胡蝶に誘われて、そちらへ参ってしまいたかったことです。もしお心があって、八重山吹の隔てをお作りにならなかったのであれば。

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