古典和歌stream

源氏物語 - 紫式部

いにしへを吹き伝へたる笛竹に
さへづる鳥の音さへ変らぬ

昔の音色をそのまま吹き伝えている笛の音に加えて、さえずる鳥の声、すなわち春鶯囀の調べまでも、昔と変わらないことだ。

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源氏物語 - 紫式部

うぐひすの昔を恋ひてさへづるは
木伝ふ花の色やあせたる

鶯が昔を恋しがってさえずるのは、木々を伝って渡ってゆく、その花の色があせてしまったからだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

こころから春まつ苑はわがやどの
紅葉を風のつてにだに見よ

ご自分の好みで春を待っておられるそちらの苑では、今は所在ないでしょう。せめてわが宿の紅葉を、風のたよりにでも御覧ください。

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源氏物語 - 紫式部

風に散る紅葉はかろし春のいろを
岩ねの松にかけてこそ見め

風に散る紅葉など軽いものだ。春の色をこそ、岩根の松にかけて御覧になるのがよいだろう。

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源氏物語 - 紫式部

舟人もたれを恋ふとか大島の
うらかなしげに声の聞こゆる

舟人も誰を恋い慕っているのだろうか。大島の浦に、うら悲しげに歌声が聞こえてくる。

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源氏物語 - 紫式部

来し方も行く方もしらぬ沖に出でて
あはれいづくに君を恋ふらん

来た方も行く先もわからない沖に漕ぎ出して、ああ、いったいどこに向かってあなたをお慕いすればよいのだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

君にもしこころたがはば松浦なる
かがみの神をかけて誓はむ

あなたにもし私が心変わりをしたなら、松浦にいらっしゃる鏡の神にかけて誓いを立てよう。

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源氏物語 - 紫式部

年を経ていのる心のたがひなば
かがみの神をつらしとや見む

長年にわたって祈ってきた願いがかなわないのであれば、鏡の神をつらいものとお恨み申しあげることになろうか。

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源氏物語 - 紫式部

浮島を漕ぎ離れても行く方や
いづくとまりと知らずもあるかな

浮島を漕ぎ離れても、行く先はどこが泊まりとも知れずにいることだ。

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源氏物語 - 紫式部

行くさきも見えぬ波路に舟出して
風にまかする身こそ浮きたれ

行く先も見えない波路に舟出して、風にまかせて漂うわが身は、なんと頼りなくつらいことか。

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源氏物語 - 紫式部

うきことに胸のみ騒ぐひびきには
ひびきの灘もさはらざりけり

つらいことに胸ばかりが騒ぐ、その響きにくらべれば、名高い響きの灘も何ほどのこともなかった。

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源氏物語 - 紫式部

ふたもとの杉のたちどをたづねずは
ふる川のべに君をみましや

二本の杉が立っている所を訪ねてこなかったなら、古川のほとりであなたさまにお目にかかることができただろうか。

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源氏物語 - 紫式部

初瀬川はやくのことは知らねども
今日の逢ふ瀬に身さへながれぬ

初瀬川の流れが早いように、昔のことは何も知らないけれど、今日のこの逢瀬のうれしさに、涙とともにこの身までも流れてしまいそうだ。

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源氏物語 - 紫式部

知らずとも尋ねてしらむ三島江に
生ふる三稜のすぢは絶えじを

あなたが知らなくても、尋ねればわかるでしょう。三島江に生える三稜の筋が絶えないように、私たちの縁もまた絶えることはないのですから。

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源氏物語 - 紫式部

数ならぬみくりやなにのすぢなれば
うきにしもかく根をとどめけむ

人の数にも入らないわが身は、いったい何の筋があって、三稜が泥に根を下ろすように、このつらい世に生まれつき、とどまってきたのだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

恋ひわたる身はそれなれど玉かづら
いかなるすぢを尋ね来つらむ

恋いつづけてきたわが身は昔のままだが、この美しい娘は、いったいどのような筋をたどって私を尋ねてきたのだろうか。

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