古典和歌stream

源氏物語 - 紫式部

こほりとぢ石間の水はゆきなやみ
そらすむ月のかげぞながるる

氷が閉ざして石の間の水は流れかね、澄んだ空の月の光ばかりが西へ流れてゆく――身動きできぬ私をよそに、あなたは。

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源氏物語 - 紫式部

かきつめてむかし恋しき雪もよに
あはれを添ふる鴛鴦のうきねか

あれこれと昔が恋しく思われる雪もよいの夜に、いっそう哀れを添える鴛鴦の浮き寝の、悲しげな声であることよ。

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源氏物語 - 紫式部

とけて寝ぬねざめさびしき冬の夜に
結ぼほれつる夢のみじかさ

うちとけて眠ることもできず、目覚めれば寂しい冬の夜に、心がふさいだまま見た、あの夢の何と短かったことか。

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源氏物語 - 紫式部

なき人をしたふ心にまかせても
かげ見ぬみつの瀬にやまどはむ

亡き人を慕う心のままに後を追って行っても、その姿も見えぬ三途の川の瀬で、道に迷うばかりなのだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

かけきやは川瀬の浪もたちかへり
君がみそぎのふぢのやつれを

思ってもみただろうか。賀茂川の川瀬の浪が立ち返るように、また御禊の日がめぐってきて、あなたが藤衣に身をやつしたまま、除服の禊をなさろうとは。

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源氏物語 - 紫式部

ふぢごろも着しはきのふと思ふまに
けふはみそぎの瀬にかはる世を

藤衣を着たのは昨日のことと思っているうちに、今日はもう除服の禊をする時期に変わってしまった。淵が瀬になるという、移り変わりの激しい世であることよ。

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源氏物語 - 紫式部

さ夜中に友呼びわたる雁がねに
うたて吹き添ふ荻のうは風

真夜中に友を呼びながら空を渡ってゆく雁の声に、いっそう嘆きを吹き添えるように鳴る、荻の葉末を渡る風であることよ。

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源氏物語 - 紫式部

くれなゐの涙にふかき袖の色を
あさみどりにやいひしをるべき

血の涙に濃く染まった私の袖の色を、六位の浅緑などと言っておとしめてよいものだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

いろいろに身のうきほどの知らるるは
いかに染めける中の衣ぞ

さまざまなことにつけて我が身のつらい境遇が思い知られるのは、どのように染め定められた二人の仲なのだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

霜氷うたてむすべる明けぐれの
空かきくらし降るなみだかな

霜も氷もひどく責めるように結んでいる、夜明けの薄暗い空を、さらにかき曇らせて降る私の涙であることよ。

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源氏物語 - 紫式部

あめにますとよをかひめの宮人も
わが心ざすしめを忘るな

天にいらっしゃる豊岡姫にお仕えする宮人であるあなたも、私が心をかけて張り渡した注連縄のことを、どうか忘れないでほしい。

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源氏物語 - 紫式部

をとめごも神さびぬらし天つ袖
ふるき世の友よはひ経ぬれば

かつての舞姫であるあなたも、今は神々しく年を重ねてしまわれたらしい。天つ袖を振って舞ったころからの古い友である私も、こうして年をとってしまったのだから。

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源氏物語 - 紫式部

かけていへば今日のこととぞ思ほゆる
日かげの霜の袖にとけしも

五節のことに託しておっしゃるなら、まるで今日のことのように思い出される。日の光に霜が解けるように、日蔭のかづらをかけた私が、あなたに心を許したあの昔のことも。

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源氏物語 - 紫式部

日かげにもしるかりけめやをとめごが
あまの羽袖にかけし心は

日の光の下でも、はっきりお分かりになっただろうか。舞姫であるあなたの天の羽袖に心を寄せた、私の思いは。

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源氏物語 - 紫式部

鶯のさへづる声はむかしにて
むつれし花のかげぞかはれる

鶯のさえずる声、すなわち春鶯囀の調べは昔のままだが、親しく遊びかわしたあの花の蔭は、すっかり変わってしまった。

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源氏物語 - 紫式部

九重をかすみ隔つるすみかにも
春とつげくるうぐひすの声

宮中から霞に隔てられたこの住まいにも、春が来たと告げに来る鶯の声であることよ。

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