古典和歌stream

源氏物語 - 紫式部

あふさかの関やいかなる関なれば
しげきなげきの中をわくらん

逢坂の関とはいったいどのような関でございますから、木の茂った中を分け入るように、これほど深い嘆きの中を分けて参らねばならないのでしょう。

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源氏物語 - 紫式部

わかれ路に添へし小櫛をかごとにて
はるけきなかと神やいさめし

あなたを伊勢へ送った別れ路に添えた小櫛、それを口実にして、遠く隔たった仲になれと神がお戒めになったのだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

別るとてはるかにいひしひとことも
かへりてものは今ぞかなしき

都を離れて伊勢へ下る時、都の方へお戻りになるなと、はるかに隔てておっしゃったあのお言葉も、帰京した今となってはかえって悲しく思われます。

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源氏物語 - 紫式部

伊勢の海のふかきこころをたどらずて
ふりにし跡と波や消つべき

伊勢物語の海のように深い情趣をたどりもせずに、古びた昔語りだからといって、波が砂の足跡を消すように、なきものにしてよいものでしょうか。

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源氏物語 - 紫式部

雲のうへに思ひのぼれる心には
千ひろの底もはるかにぞ見る

雲の上の宮中にまで高く昇ろうと志すこの物語の心からは、千尋の海底のように深いという伊勢物語も、はるか下に見えるのです。

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源氏物語 - 紫式部

見るめこそうらふりぬらめ年へにし
伊勢をのあまの名をや沈めむ

見た目にはうらぶれて古びてしまっていましょうが、長い年月を経た伊勢の海人の名を、沈めてよいものでしょうか。

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源氏物語 - 紫式部

一人ゐて嘆きしよりは海人の住む
かたをかくてぞ見るべかりける

都で一人残って嘆いていたよりは、海人の住むあの浦のありさまを、こうして絵で見るのがよかったのだ。

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源氏物語 - 紫式部

憂きめ見しその折よりも今日はまた
過ぎにしかたにかへる涙か

あのつらい思いをした当時よりも、今日はまた、過ぎ去った日々を絵に見て、そこへ立ち返る涙がこぼれることです。

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源氏物語 - 紫式部

身こそかくしめの外なれそのかみの
心のうちを忘れしもせず

我が身はこのように今は位を退いて注連の外にあるけれども、あの当時、あなたを思っていた心の内を、忘れることはない。

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源氏物語 - 紫式部

しめのうちは昔にあらぬ心地して
神代のことも今ぞ恋しき

注連の内にいた昔とはもう違ってしまった心地がして、神にお仕えしていた神代のようなあの日々が、今こそ恋しく思われます。

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源氏物語 - 紫式部

身を変へて一人帰れる山里に
聞きしに似たる松風ぞ吹く

尼となって身を変え、ただ一人この山里に帰って来てみると、昔聞いたのに似た松風が吹いている。

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源氏物語 - 紫式部

故里に見し世の友を恋ひわびて
さへづることを誰か分くらむ

故郷で親しくしていた昔の友を恋しく思ってさえずっているのを、いったい誰が聞き分けてくれるだろう。

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源氏物語 - 紫式部

契りしに変はらぬ琴の調べにて
絶えぬ心のほどは知りきや

約束したときと変わらぬ琴の調べによって、絶えることのない私の心のほどを、あなたは分かってくれただろうか。

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源氏物語 - 紫式部

変はらじと契りしことを頼みにて
松の響きに音を添へしかな

変わるまいと約束してくださったことを頼みにして、松風の響きに、私の泣く声を添えていたのです。

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源氏物語 - 紫式部

雪深み深山の道は晴れずとも
なほふみ通へあと絶えずして

雪が深いので奥山の道は晴れないとしても、それでもやはり雪を踏み分けて手紙を通わせてほしい。足跡を絶やすことなく。

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源氏物語 - 紫式部

雪間なき吉野の山をたづねても
心の通ふあと絶えめやは

雪の晴れ間のない吉野の山を訪ねるとしても、心の通ってくる跡が絶えることがございましょうか、絶えるはずはございません。

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