古典和歌stream

源氏物語 - 紫式部

世をうみにここらしほじむ身となりて
なほこの岸をえこそ離れね

世を憂しと思って海辺で長年潮に馴染む身となりましたが、それでもなおこの岸を離れることができません。

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源氏物語 - 紫式部

都出でし春のなげきにおとらめや
年ふる浦をわかれぬる秋

都を出た春の嘆きに劣ろうか。年を経たこの浦を離れる、この秋の嘆きは。

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源氏物語 - 紫式部

わたつ海にしづみうらぶれ蛭の子の
脚立たざりし年はへにけり

大海に沈んで落ちぶれ、蛭の子が脚も立たなかったように、身動きもとれぬまま年を経てしまいました。

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源氏物語 - 紫式部

宮柱めぐりあひける時しあれば
別れし春のうらみのこすな

宮柱をめぐって出会ったように、こうしてめぐり逢う時もあるのだから、別れたあの春の恨みを今に残してくれるな。

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源氏物語 - 紫式部

嘆きつつあかしのうらに朝ぎりの
たつやと人を思ひやるかな

嘆きながら夜を明かす明石の浦には、その嘆きの息で朝霧が立っているだろうかと、あなたのことを思いやることだ。

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源氏物語 - 紫式部

須磨の浦に心をよせし舟人の
やがて朽たせる袖を見せばや

須磨の浦で心をお寄せ申し上げた舟人の、そのまま涙に朽ちてしまった袖を、お見せしたいものでございます。

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源氏物語 - 紫式部

かへりてはかごとやせまし寄せたりし
なごりに袖のひがたかりしを

立ち返ってはこちらから恨み言を申したいものだ。あなたが心を寄せてくださった、その名残で私の袖は乾きにくかったのだから。

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源氏物語 - 紫式部

かねてより隔てぬなかとならはねど
別れはをしきものにぞありける

以前から隔てのない仲として親しんできたわけでもないが、それでも別れは惜しいものであった。

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源氏物語 - 紫式部

うちつけの別れを惜しむかごとにて
思はむ方に慕ひやはせぬ

急な出会いの別れを惜しむというのは口実で、本当はお思いの方をお慕いになるのではございませんか。

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源氏物語 - 紫式部

いつしかも袖うちかけむをとめ子が
世をへてなづる岩のおひさき

早くこの袖をかけて抱いてやりたいものだ。天女が世を経て撫でるという岩のように、末長い姫君の行く末よ。

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源氏物語 - 紫式部

ひとりしてなづるは袖のほどなきに
覆るばかりのかげをしぞまつ

一人で撫でて育てますには私の袖は狭うございますから、すべてを覆うほどの御庇護の陰をお待ち申しております。

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源氏物語 - 紫式部

思ふどちなびく方にはあらずとも
われぞけぶりにさきだちなまし

思い合うお二人がなびいてゆく方角には添えなくとも、私は煙となって先立ってしまいましょう。

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源氏物語 - 紫式部

誰により世をうみやまに行きめぐり
絶えぬ涙にうきしづむ身ぞ

誰のためにこのつらい世を海に山にさまよい歩き、絶えることのない涙に浮き沈みしてきた我が身なのか。

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源氏物語 - 紫式部

海松や時ぞともなきかげにゐて
何のあやめもいかにわくらむ

海松のように、いつと定まった時もない岩陰にいて、何の物の道理を、どのように見分けているのだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

数ならぬみ島がくれに鳴く鶴を
今日もいかにととふ人ぞなき

物の数にも入らない島陰に隠れて鳴く鶴を、五十日の今日でさえ、どうしているかと尋ねてくださる人もございません。

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源氏物語 - 紫式部

水鶏だにおどろかさずはいかにして
荒れたる宿に月をいれまし

水鶏が戸を叩いて驚かせてくれなければ、どのようにしてこの荒れた宿に月をお入れすることができましたでしょう。

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