古典和歌stream

源氏物語 - 紫式部

ながむらん同じ雲ゐをながむるは
思ひもおなじ思ひなるらむ

あなたさまが眺めておられるのと同じ雲居を娘も眺めておりますのは、その思いもまた同じ思いなのでございましょう。

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源氏物語 - 紫式部

いぶせくも心にものをなやむかな
やよやいかにと問ふ人もなみ

晴れぬ思いのままに心の内で悩んでいることだ。さあどうしているかと尋ねてくれる人もないので。

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源氏物語 - 紫式部

思ふらん心のほどややよいかに
まだ見ぬ人の聞きかなやまむ

お思いくださるというお心のほどは、さあ、どれほどのものでございましょうか。まだお目にかかったこともない者が、お噂を聞いただけで思い悩むことなどございましょうか。

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源氏物語 - 紫式部

秋の夜のつきげの駒よわが恋ふる
雲ゐをかけれ時のまも見ん

秋の夜の月毛の駒よ、私が恋しく思う雲居まで駆けてくれ。ほんのひとときでもあの人を見たいのだ。

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源氏物語 - 紫式部

むつごとを語りあはせむ人もがな
うき世の夢もなかばさむやと

睦言を語り合える人がいてほしいものだ。このつらい世の夢も半ば覚めるかと思って。

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源氏物語 - 紫式部

明けぬ夜にやがてまどへる心には
いづれを夢とわきて語らむ

明けることのない夜にそのまま迷い続けております心には、どちらを夢と区別して申し上げればよいのでございましょう。

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源氏物語 - 紫式部

しほしほとまづぞ泣かるるかりそめの
みるめはあまのすさびなれども

涙にしおれて、まず泣けてくるのだ。かりそめに見た海松布など、海人のたわむれにすぎないけれども。

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源氏物語 - 紫式部

うらなくも思ひけるかな契りしを
松より浪は越えじものぞと

疑いもせずに思っておりましたことです。約束したのだから、末の松山を波が越えることはあるまいと。

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源氏物語 - 紫式部

このたびは立ちわかるとも藻塩やく
けぶりは同じかたになびかむ

この度は別れて旅立つことになっても、藻塩を焼く煙が同じ方へなびくように、私たちの心も同じ方を向いていよう。

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源氏物語 - 紫式部

かきつめてあまのたく藻の思ひにも
今はかひなきうらみだにせじ

かき集めて海人が焚く藻の火のように思いは燃えておりますが、今はもう甲斐のないことですから、お恨み申し上げることさえいたしますまい。

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源氏物語 - 紫式部

なほざりに頼めおくめる一ことを
つきせぬ音にやかけてしのばん

いい加減にお頼みにさせておかれるらしいそのひと言を、尽きることのない琴の音に、また泣く音にかけて、お慕い申し上げることになるのでしょうか。

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源氏物語 - 紫式部

逢ふまでのかたみに契る中の緒の
しらべはことに変らざらなむ

再び逢う日までの形見として互いに契り交わす、その中の緒の調べは、格別に変わらないでいてほしい。

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源氏物語 - 紫式部

うちすててたつも悲しき浦波の
なごりいかにと思ひやるかな

あなたを残して旅立つのも悲しいが、その後の浦波の名残がどうなるかと、思いやられることだ。

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源氏物語 - 紫式部

年へつる苫屋も荒れてうき波の
かへるかたにや身をたぐへまし

長年住んでまいりました苫屋も荒れ果てて、悲しく浮かぶ波の帰っていく方へ、この身を添わせてしまおうかと存じます。

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源氏物語 - 紫式部

寄る波にたちかさねたる旅ごろも
しほどけしとや人のいとはむ

寄せる波ではありませんが、裁ち重ねましたこの旅の衣が涙に濡れているからといって、あなたさまがお厭いになることなどございましょうか。

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源氏物語 - 紫式部

かたみにぞかふべかりける逢ふことの
日数へだてん中のころもを

互いに形見として取り替えるべきであった。逢うまでの日数を隔てることになる、その中の衣を。

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