古典和歌stream

源氏物語 - 紫式部

おしなべてたたく水鶏におどろかば
うはの空なる月もこそいれ

手当たり次第に戸を叩く水鶏に驚いていたら、上の空の月まで招き入れてしまうことになるよ。

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源氏物語 - 紫式部

すみよしのまつこそものは悲しけれ
神代のことをかけて思へば

住吉の松を見ますと、まず何よりも胸に迫ってまいります。神代の昔のことを、そしてあの侘住まいの日々を思い合わせますと。

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源氏物語 - 紫式部

あらかりし浪のまよひにすみよしの
神をばかけてわすれやはする

荒々しかった浪に翻弄されたあの折のことを思えば、住吉の神を心にかけて忘れることなどあろうか。

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源氏物語 - 紫式部

みをつくし恋ふるしるしにここまでも
めぐり逢ひけるえには深しな

身を尽くして恋い慕ってきたしるしに、この難波までも巡り逢うことができた。二人の縁は深いのだ。

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源氏物語 - 紫式部

数ならでなにはのこともかひなきに
などみをつくし思ひそめけむ

物の数にも入らぬ身で、何ごとにつけても甲斐のないことですのに、どうして身を尽くしてお慕い申し上げるようになったのでしょう。

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源氏物語 - 紫式部

露けさのむかしに似たる旅ごろも
田蓑の島の名にはかくれず

涙に濡れていた昔に似たこの旅の衣は、田蓑の島という蓑の名によっても隠すことができない。

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源氏物語 - 紫式部

降りみだれひまなき空に亡きひとの
天かけるらむ宿ぞかなしき

雪や霙が絶え間なく降り乱れるこの空を、亡くなった方が天翔けておられるだろうと思うと、その宿のさまが悲しく思われる。

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源氏物語 - 紫式部

消えがてにふるぞ悲しきかきくらし
わが身それとも思ほえぬ世に

消えることもできずに降り続く霙のように、生き永らえておりますのが悲しゅうございます。目の前も暗くなり、わが身がわが身とも思われないこの世に。

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源氏物語 - 紫式部

たゆまじき筋を頼みし玉かづら
思ひのほかにかけはなれぬる

絶えることはあるまいと頼みにしていた玉かづらの筋であったのに、思いもかけず離れていってしまうのだ。

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源氏物語 - 紫式部

玉かづら絶えてもやまじ行く道の
たむけの神もかけてちかはむ

玉かづらが絶えましても、お慕いする気持ちがやむことはございません。これから行く道の手向けの神にかけてもお誓い申し上げます。

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源氏物語 - 紫式部

亡き人を恋ふる袂のひまなきに
荒れたる軒のしづくさへ添ふ

亡き人を恋しく思う涙に袖の乾く間もないのに、荒れた軒から落ちる雫までが加わることだ。

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源氏物語 - 紫式部

たづねてもわれこそとはめ道もなく
深きよもぎのもとのこころを

たとえ探し求めてでも、この私こそが訪ねよう。踏み分ける道もないほど深く茂った蓬の下にある、昔のままのあの人の心を。

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源氏物語 - 紫式部

藤波のうち過ぎがたく見えつるは
まつこそ宿のしるしなりけれ

藤波が通り過ぎがたく見えたのは、松が、そして待っていてくれる心が、この宿のしるしであったからなのだ。

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源氏物語 - 紫式部

年をへてまつしるしなきわが宿を
花のたよりにすぎぬばかりか

長い年月お待ち申し上げてもその甲斐のなかったこの宿を、花をご覧になるついでに通り過ぎてくださっただけなのでしょうか。

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源氏物語 - 紫式部

行くと来とせきとめがたき涙をや
絶えぬ清水と人は見るらむ

下って行く時も上って来る時も、せき止めることのできないこの涙を、人は絶えることのない関の清水と見るのだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

わくらばに行きあふみちをたのみしも
なほかひなしやしほならぬ海

たまたま行き会った近江路の道を頼みに思ったが、やはり甲斐のないことであった。塩のないこの海には貝もいないのだから。

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