源氏物語 - 紫式部
草も若い常陸の浦のいかが崎、そのいかがではないが、どうにかしてお会いしたいものです、田子の浦波のように。
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常陸にある駿河の海の須磨の浦に、波よ立ち出でよ。箱崎の松ではないが、お待ちしています。
篝火とともに立ちのぼる私の恋の煙こそは、いつまでも絶えることのない炎なのだった。
行方も知れない空で、どうか消してしまってください。篝火のついでに立ちのぼる、そのような煙だとおっしゃるのならば。
ありふれた風が荻の葉を吹きすぎてゆく音でさえ、つらいわが身ひとつには、しみじみと心にしみる思いがして。
吹き乱れる風のようすに、女郎花がしおれ果ててしまいそうな心地がすることです。
木の下の露になびいてしまっていたなら、女郎花も荒い風にしおれることはなかっただろうに。
風が騒ぎ、むら雲が入り乱れる夕方にも、忘れる間もなく忘れられないあなたであることよ。
雪の深い小塩の山に飛び立つ雉の足跡ではないが、昔の行幸の先例を、今日はたずねてみてほしい。
小塩山の雪深く積もった松原には、今日ほどの行幸の跡は、これまでなかったのではないでしょうか。
空一面が霧に曇り、朝曇りしていたあの行幸では、はっきりと空の光を、帝のお姿を拝することができたでしょうか。
茜さす光は空に曇りなく輝いていたのに、どうして行幸の雪に目を曇らせてしまったのだろうか。
どちらの方から言い進めていっても、玉櫛笥のように、あなたは私の身から離れない懸子、すなわち孫なのでした。
わが身こそが恨めしく思われることです。唐衣ではないけれど、あなたのお袖に馴れ親しむことができないと思いますと。
唐衣、また唐衣、唐衣。返す返すも唐衣であることよ。
恨めしいことだ。沖の玉藻を潜って採るまで、いや裳を着けるこの日まで、磯に隠れていた海人の、あなたの心よ。