古典和歌stream

源氏物語 - 紫式部

よるべなみかかる渚にうち寄せて
海人もたづねぬもくづとぞ見し

寄る辺がないままにこのような渚に打ち寄せられて、海人も探し求めないただの藻屑だと見ておりました。

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源氏物語 - 紫式部

おなじ野の露にやつるる藤袴
あはれはかけよかごとばかりも

同じ野の露にしおれている藤袴である私に、せめて申しわけほどにでも、憐れみをかけてください。

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源氏物語 - 紫式部

たづぬるにはるけき野辺の露ならば
うす紫やかごとならまし

たずねてみて、はるか遠い野辺の露であるならば、薄紫のゆかりということも、口実として言えたでしょうに。

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源氏物語 - 紫式部

妹背山ふかき道をばたづねずて
をだえの橋にふみまどひける

妹背山のように姉弟であるという深い事情をたずねもせずに、緒絶えの橋のあたりで、文を送り、恋の道に踏み迷っていたことです。

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源氏物語 - 紫式部

まどひける道をば知らで妹背山
たどたどしくぞたれもふみみし

あなたが踏み迷っていた道も知らず、妹背山の縁も知らないまま、誰もがおぼつかない気持ちで文を見ていたのです。

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源氏物語 - 紫式部

数ならばいとひもせまし長月に
命をかくるほどぞはかなき

人の数にも入らぬ並みの思いであれば、この長月をこそ厭わしく思ったでしょう。それなのに、この一月に命をかけて頼みにしているのが、はかないことです。

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源氏物語 - 紫式部

朝日さすひかりを見ても玉笹の
葉分の霜を消たずもあらなむ

朝日のさす光を御覧になっても、玉笹の葉を分けて置く霜のような私を、消してしまわないでいてほしいものです。

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源氏物語 - 紫式部

忘れなむと思ふもものの悲しきを
いかさまにしていかさまにせむ

忘れてしまおうと思うのも、やはり悲しいことなので、どのようにして、どうすればよいのだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

心もて光にむかふあふひだに
朝おく霜をおのれやは消つ

みずから望んで光に向かう葵でさえ、朝置いた霜を自分から消すことがあるでしょうか、ありはしません。

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源氏物語 - 紫式部

おりたちて汲みはみねども渡り川
人のせとはた契らざりしを

水に下り立って汲んでみたわけではないけれど、あの渡り川を、他人の背に負われて渡るとは約束しなかったのに。

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源氏物語 - 紫式部

みつせ川わたらぬさきにいかでなほ
涙のみをのあわと消えなん

三途の川を渡ってしまう前に、どうにかして、涙の川の水脈に立つ泡となって消えてしまいたいものです。

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源氏物語 - 紫式部

心さへ空にみだれし雪もよに
ひとり冴えつるかたしきの袖

空模様ばかりか心までも乱れた雪の降りしきる夜に、独り寝の片敷の袖が、ひとり冷えきってしまいました。

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源氏物語 - 紫式部

独りゐてこがるる胸の苦しきに
思ひあまれる炎とぞ見し

北の方が独りいて焦がれる胸の苦しさに、思いあまってあふれ出た炎だと、私には見えました。

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源氏物語 - 紫式部

うきことを思ひさわげばさまざまに
くゆる煙ぞいとど立ちそふ

つらい出来事を思って気持ちが騒ぐと、さまざまに悔やまれる思いが、くすぶる煙のようにいよいよ立ちのぼることだ。

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源氏物語 - 紫式部

今はとて宿離れぬとも馴れきつる
真木の柱はわれを忘るな

今はこれきりとこの家を離れてゆくとしても、長年なれ親しんできた真木の柱よ、私を忘れないでほしい。

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源氏物語 - 紫式部

馴れきとは思ひいづとも何により
立ちとまるべき真木の柱ぞ

なれ親しんできた者として思い出してくれるとしても、いったい何を頼りにこの家に立ちとどまることができましょうか、真木の柱よ。

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