古典和歌stream

源氏物語 - 紫式部

浅けれど石間の水はすみはてて
宿もる君やかけはなるべき

浅いけれども石の間の水は澄みきって住みつづけるのに、この家を守っておられた御方が離れてゆかれるとは、どうしたことでしょう。

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源氏物語 - 紫式部

ともかくも岩間の水の結ぼほれ
かけとむべくも思ほえぬ世を

とにもかくにも岩間の水が凍り結ぼれるように、私も気がふさいで、この家に留まっていられるとも思われない身の上ですのに。

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源氏物語 - 紫式部

深山木に羽うちかはしゐる鳥の
またなくねたき春にもあるかな

深山木に羽を交わしてとまっている鳥のように、あなたが人と添っておられるのが、またとなくねたましい春であることよ。

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源氏物語 - 紫式部

などてかくはひあひがたき紫を
こころに深く思ひそめけむ

どうしてこう、灰も合わず、逢うこともかなわぬ紫を、心に深く思い染めてしまったのだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

いかならん色とも知らぬ紫を
こころしてこそ人はそめけれ

どのようなお心での色とも知らなかった紫を、たいそう深いお心づかいで染めてくださったのですね。

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源氏物語 - 紫式部

九重にかすみへだてば梅の花
ただかばかりも匂ひこじとや

宮中と幾重にも霞が隔ててしまえば、梅の花よ、せめてこの香ばかりも匂ってこないというのだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

かばかりは風にもつてよ花の枝に
立ちならぶべきにほひなくとも

せめてこの香ばかりは、風のたよりにでもお伝えください。花の枝に立ち並ぶほどの匂いは、私にはないとしても。

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源氏物語 - 紫式部

かきたれてのどけきころの春雨に
ふるさと人をいかに忍ぶや

降りしきって、のどかなこのごろの春雨に、昔なじみの私のことを、どのように思い出してくださっているでしょうか。

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源氏物語 - 紫式部

ながめする軒のしづくに袖ぬれて
うたかた人をしのばざらめや

物思いに沈んでいる軒のしずくに袖が濡れて、ほんのひとときも、あなたを思い出さずにいられましょうか。

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源氏物語 - 紫式部

思はずに井手のなか道へだつとも
いはでぞ恋ふる山吹の花

思いがけず井手の中道に隔てられてしまっても、口に出しては言わないまま恋いつづけている、山吹の花よ。

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源氏物語 - 紫式部

おなじ巣にかへりしかひの見えぬかな
いかなる人か手ににぎるらん

同じ巣でかえったはずの卵が一つ見えないことだ。いったいどのような人が手に握っているのだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

巣がくれて数にもあらぬかりのこを
いづ方にかはとりかくすべき

巣の片隅に隠れて物の数にも入らない仮の子を、いったい誰がどこへ取り隠したりするでしょうか。

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源氏物語 - 紫式部

おきつ舟よるべなみ路にただよはば
棹さしよらむとまり教へよ

沖の舟が寄る辺もなく波路にただよっているのなら、私のほうから棹をさして寄っていきましょう。どこが泊まりか教えてください。

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源氏物語 - 紫式部

よるべなみ風のさわがす舟人も
思はぬかたに磯づたひせず

寄る辺がなくて、風に騒がされている舟人であっても、思いもよらぬ方角へ磯伝いをすることはありません。

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源氏物語 - 紫式部

花の香は散りにし枝にとまらねど
うつらむ袖にあさくしまめや

花の香は、散ってしまった枝にはとどまらないけれど、移り香となる袖には、浅く染みるということがありましょうか。

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源氏物語 - 紫式部

花の枝にいとど心をしむるかな
人のとがめん香をばつつめど

その花の枝にこそ、いよいよ心が染みつくことです。人に咎められそうな香は、包み隠しているけれども。

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