山家集 - 西行
寂しさに耐えている人が、私のほかにもう一人いてくれればよいのに。その人と庵を並べて住もう、この冬の山里に。
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霜にあって色を変えた葦の穂が、寂しく見える難波江の浦であることよ。
葉を玉のように巻いて茂っていた垣根の葛が霜に枯れて、寂しく見える冬の山里である。
旅寝をしている草の枕に霜が冷たく置いて、有明の月の光が出るのが待たれることだ。
冬枯れて寒々と殺風景な山里に、月が澄んだ光で住むように照っていることこそ、しみじみと心にしみることだ。
月が出る峰の木の葉もすっかり散ってしまって、麓の里ではうれしく思っていることだろう。
秋の花に置いた露に宿っていた月の光よりも、枯れ野を照らす月のほうが、しみじみと心にしみることだ。
氷が一面に張りつめた沼の葦原に風が冷たく吹いて、月もその光が寂しく感じられることだ。
霜が冷たく凍る庭の木の葉を踏み分けて、「月を見ているか」と訪ねてくる人がいればよいのになあ。
冷え冷えと冴えて見えて、冬が深まっていく月の光は、水もない庭に氷を敷きつめている。
獲物に向けて放ったのに木にとまってしまったはし鷹よ、こちらのそばへ来いよ、と呼ぶ犬飼いの声がしきりに聞こえる。
空を暗くして降りしきる雪で雉の姿は見えないけれども、鷹の羽音に鈴の音を添えて放ってやる。
降る雪に、鳥の集まる場所も見えないほど埋もれてしまって、鳥のいる所も、とらえどころもない御狩野の原であることよ。
木々の間から漏れる月の光とも見えることよ。まだらに降り積もった庭の白雪は。
のぼってくる朝日の光が差すにつれて、都の雪は消えたり消えなかったりしている。
すっかり枯れてしまった萱の上葉に降り積もる雪は、もう一度尾花が咲いたような心地がすることだ。