古典和歌stream

源氏物語 - 紫式部

涙河浮かぶ水泡も消えぬべし
流れて後の瀬をも待たずて

涙の河に浮かぶ水の泡も消えてしまうでしょう。流れた後にまた逢う瀬が来るのを待たずに。

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源氏物語 - 紫式部

見しはなくあるは悲しき世の果てを
背きしかひもなくなくぞ経る

見た人はもういなくなり、残っている者は悲しいという、この世の果てを、出家した甲斐もなく泣きながら過ごしております。

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源氏物語 - 紫式部

別れしに悲しきことは尽きにしを
またぞこの世の憂さはまされる

お別れしたときに悲しみは尽きたと思っていたのに、またこの世のつらさは増していくのだ。

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源氏物語 - 紫式部

ひき連れて葵かざししそのかみを
思へばつらし賀茂の瑞垣

供を引き連れて葵を挿頭にしたあの昔を思うと、つらいことだ、この賀茂の瑞垣は。

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源氏物語 - 紫式部

憂き世をば今ぞ別るるとどまらむ
名をば糺の神にまかせて

つらいこの世に今こそ別れを告げる。後に残るであろう名は、糺の神にお任せして。

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源氏物語 - 紫式部

亡き影やいかが見るらむよそへつつ
眺むる月も雲隠れぬる

亡き父上の御霊はどのようにご覧になっているだろうか。なぞらえて眺めていた月も、雲に隠れてしまった。

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源氏物語 - 紫式部

いつかまた春の都の花を見む
時失へる山賤にして

いつになったらまた、春の都の花を見ることができるだろう。時勢を失った山賤の身となって。

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源氏物語 - 紫式部

咲きてとく散るは憂けれどゆく春は
花の都を立ち帰り見よ

咲いてすぐ散るのはつらいことだけれど、過ぎ行く春には、花の都に立ち帰って見てください。

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源氏物語 - 紫式部

生ける世の別れを知らで契りつつ
命を人に限りけるかな

生きている間の別れというものを知らないまま契りを交わして、命ある限りはと、その限りを人に置いていたことだ。

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源氏物語 - 紫式部

惜しからぬ命に代へて目の前の
別れをしばしとどめてしがな

惜しくもないこの命に代えてでも、目の前のこの別れを、しばらく引き留めておきたいものです。

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源氏物語 - 紫式部

唐国に名を残しける人よりも
行方知られぬ家居をやせむ

唐の国に名を残したという人よりもさらに、行方も知られない住まいを構えることになるのだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

故郷を峰の霞は隔つれど
眺むる空は同じ雲居か

故郷を峰の霞は隔てているけれど、眺めるこの空は同じ空なのだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

松島の海人の苫屋もいかならむ
須磨の浦人しほたるるころ

松島の海人の苫屋もどうしておられるだろうか。須磨の浦人が涙に濡れているこのごろは。

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源氏物語 - 紫式部

こりずまの浦のみるめのゆかしきを
塩焼く海人やいかが思はむ

懲りもせず、その浦の海松布を見たいと思う気持ちを、塩を焼く海人はどう思うだろうか。

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源氏物語 - 紫式部

塩垂るることをやくにて松島に
年ふる海人も嘆きをぞつむ

涙に濡れることを仕事のようにして、松島に年を重ねる海人もまた、嘆きを積み重ねております。

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源氏物語 - 紫式部

浦にたく海人だにつつむ恋なれば
くゆる煙よ行く方ぞなき

浦で火を焚く海人でさえ包み隠す恋なのですから、くすぶる煙には行き場もありません。

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