古典和歌stream

蜻蛉日記 - 藤原道綱

わが袖は引くとぬらしつあやめ草
人のたもとにかけてかわかせ

我が袖は、引くというので濡らしてしまった。この菖蒲草を、あなたの袂に掛けて乾かしてください。

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蜻蛉日記

引きつらむ袂は知らずあやめ草
あやなき袖にかけずもあらなむ

引いたという袂のことは存じません。菖蒲草を、あやなき袖に掛けないでいてほしいのです。

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蜻蛉日記 - 藤原道綱母

我ぞげにとけてぬらめや郭公
ものおもひまさる聲となるらむ

私はまことに、心解けて寝ることなどあろうか。ほととぎすは、物思いのまさる声となるのだろう。

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蜻蛉日記 - 藤原道綱

夏山の木のしたつゆのふかければ
かつぞなげきの色もえにける

夏山の木の下露が深いので、一方では、嘆きの色も燃え出てしまったのだった。

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蜻蛉日記

露にのみいろもえぬれば言の葉を
いくしほとかは知るべかるらむ

露によってだけ色が燃え出たのなら、その言の葉を、幾入りの染めとどうして知ることができましょう。

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蜻蛉日記 - 藤原道綱

夕されの寢屋のつまづま詠むれば
てづからのみぞ蜘蛛もかきぬる

夕暮れの寝屋の端々を眺めると、蜘蛛でさえ、手ずからだけで糸を掛けているのだった。

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蜻蛉日記

蜘蛛のかくいとぞあやしき風吹けば
空に亂るゝものとしるしる

蜘蛛の掛ける糸こそ不思議なもの。風が吹けば空に乱れるものと知りながら掛けるとは。

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蜻蛉日記 - 藤原道綱

露にてもいのちかけたる蜘蛛のいに
あらき風をば誰かふせがむ

露ほどのものであっても、命を懸けている蜘蛛の糸に、荒い風を、いったい誰が防いでくれよう。

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蜻蛉日記 - 藤原道綱

たぢまのやくぐひのあとを今日見れば
雪の白濱白くては見じ

但馬の、鵠の跡を今日見ると、雪の白浜のように、白いままでは見まいと思う。

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蜻蛉日記 - 藤原道綱

ことわりやいはでなげきし年月も
ふるのやしろのかみさびにけむ

もっともなことだ。言わずに嘆いた年月も、布留の社のように、古びて神さびてしまったのだろう。

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蜻蛉日記 - 藤原道綱

夢ばかり見てしばかりに惑ひつゝ
明くるぞ遲きあまの戶ざしは

夢ほどにちらと見たばかりに惑い続けて、明けるのが遅いことよ、天の戸ざしは。

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蜻蛉日記 - 藤原道綱

さもこそは葛城山になれたらめ
唯ひとことやかぎりなりける

いかにも葛城山に慣れておられるのでしょう。ただ一言が限りであったのですか。

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蜻蛉日記 - 藤原道綱

かひなくて年へにけりとながむれば
たもとも花の色にこそしめ

甲斐もなく年を経てしまったと物思いに沈んで眺めると、袂までも花の色に染まってしまった。

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蜻蛉日記

年を經てなどかあやなく空にしも
花のあたりを立ちは染めけむ

年を経て、どうしてわけもなく、上の空のままで、花のあたりに立って染まったりしたのでしょう。

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蜻蛉日記 - 藤原道綱母

みがくれのほどゝいふともあやめ草
なほしたからむ思ひあふやと

水隠れの時分とはいっても、菖蒲草の下を刈るように、やはり下心を確かめてみよう。思いが合うかどうかと。

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蜻蛉日記

したからむ程をもしらずまこも草
世に生ひそめじ人はかるとても

下を刈られる時分も知らないまこも草は、けっして世に生い初めますまい。人が刈るといっても。

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