山家集 - 西行
どこまでも果てしなく、月によって心が澄みに澄んでいって、しまいには私の心はどうなろうとしているのだろうか。
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月が傾いていく山をずっと眺め続けて、名残を惜しんだそのかいがあったのだろうか。月は有明の空に残っている。
眺めていても、本当のこととは思えない心地がして、この世にあり余るほどすばらしい月の光であることよ。
これから先の月のことはわからないが、これまで過ごしてきた秋には、これほどの月の光はまだなかった。
本当のことだと誰が思うだろうか。私ひとりで見て、後になって今宵の月のすばらしさを人に語ったとしても。
月が明るすぎて昼と思われてしまうのでは、月を見るかいがないので、しばらく曇って、夜であることを知らせておくれ。
大空の、朝日山から出たからであろうか、月の光が昼と見まがうほどに明るく見えて。
有明の月の頃になったので、秋には夜の闇というものがないような心地がすることだ。
かえって、時々雲がかかることこそが、月を引き立てる飾りなのであった。
雲を吹き晴らす嵐の音は松の木にあるからだろうか、月までも松の緑の色に映えながら照っている。
時刻も定まらずに鶏が鳴いているのだろうか。秋の夜の月の光を、夜明けの光と思い違えて。
誰もがみな、もっともなことだと判定するだろう。昼と明るさを競い合っている秋の夜の月のことは。
光が冷たく冴えて、本当に月の明るい夜は、心も空に浮かれ出て、そこに住みつき、澄みわたることだ。
一点の曇りもない月の面を横切って飛ぶ雁の影を、雲がかかったのかと見まちがえたことだ。
眺めていると、いやもう心が苦しくてならないので、そんなにひどく澄みわたらないでくれ、秋の夜の月よ。
雲も見えてきた。風も吹くと荒々しくなってしまう、先ほどまでのどかであった月の光を。