金槐和歌集 - 源実朝
夕月の出ている夜、潮の満ちてくる頃合いで干潟がなくなったので、波に濡れしおれて鳴いている千鳥であることよ。
詳細を見る
夜が寒いので浦の松風が吹きすさび、虫明の波の上で千鳥が鳴いている。
月が清らかに澄んで夜が更けていくと、伊勢の海の一志の浦で、千鳥の鳴く声が聞こえる。
風が寒いので、夜が更けていくと、妹が島の形見の浦で、千鳥の鳴く声が聞こえる。
袖に吹きつける浦の松風がたえがたいほど冷たく、吹上の浜の月の下で、千鳥が鳴いている。
水鳥の鴨が水に浮いたまま寝るように、つらい思いを抱えたまま、美しい藻の床で、幾夜を過ごしたのだろうか。
難波潟の潮の引いた干潟に立っている鶴の羽が真っ白になるほどに、雪が降り続いている。
みさごのいる磯辺に立っているむろの木の、枝もたわむほどに、雪が積もっている。
奥山の岩に根を張って生える菅の根のように、こまやかに一面に降り積もった白雪よ。
夕方になると、篠竹を吹く嵐が身にしみて、吉野の嶽には雪が降っているらしい。
夕方になると、浦風が寒い。泊瀬の山には、雪が降っているらしい。
夕方になると、潮風が寒い。波の間から見える小島には、雪が降り続いている。
山が高いので、すっかり明けていく空にたなびく横雲の切れ間に、峰の白雪が見える。
見渡すと、空のはるか遠くに雪が白く見える。富士の高嶺の、明け方の空よ。
眺めていると、寂しいことだ。煙の立ちのぼる室の八島で、雪の下にくすぶり燃えている火よ。
空の雲が寄り集まっている。葛城の高間の山には、雪が降っているらしい。