古典和歌stream

山家集 - 西行

山おろしに鹿の音たぐふ夕暮に
ものかなしとはいふにやあるらん

山から吹き下ろす風に、鹿の鳴く声が連れ立って聞こえてくる夕暮れ、このような時をこそ、もの悲しいと言うのであろうか。

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山家集 - 西行

鹿もわぶ空のけしきも時雨めり
かなしかれともなれる秋かな

鹿もわびしげに鳴き、空の様子も時雨れてくるようだ。まるで悲しくあれと言わんばかりになっている秋であることよ。

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山家集 - 西行

なにとなく住ままほしくぞ思ほゆる
鹿あはれなる秋の山里

なんとなく、ここに住んでみたいと思われることだ。鹿の声がしみじみと心にしみる秋の山里は。

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山家集 - 西行

牡鹿鳴く小倉の山の裾近み
ただ独りすむ我が心かな

牡鹿の鳴く小倉山の裾が近いので、ただ独りここに住み、しみじみと澄みわたっていく私の心であることよ。

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山家集 - 西行

夜を残す寝覚めに聞くぞあはれなる
夢野の鹿もかくや鳴くらん

まだ夜を残している暁の寝覚めに聞く鹿の声こそ、しみじみと心にしみる。あの夢野の鹿も、このように鳴いたのだろうか。

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山家集 - 西行

篠原や霧にまがひて鳴く鹿の
声かすかなる秋の夕暮

篠竹の生い茂る原よ。霧にまぎれて姿の見えないまま鳴く鹿の声が、かすかに聞こえる秋の夕暮れであるよ。

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山家集 - 西行

隣ゐね原の仮屋に明かす夜は
鹿あはれなるものにぞありける

隣に住む人もいない野原の仮小屋で夜を明かすときには、鹿の声がしみじみと心にしみるものであったのだ。

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山家集 - 西行

小山田の庵近く鳴く鹿の音に
驚かされて驚かすかな

山の田の番小屋の近くで鳴く鹿の声に、はっと目を覚まされて、こちらも鳴子を鳴らして鹿を驚かすことだ。

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山家集 - 西行

鹿の音を聞くにつけても住む人の
心知らるる小野の山里

鹿の鳴く声を聞くにつけても、ここに住む人の心のほどが自然と察せられる小野の山里である。

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山家集 - 西行

独り寝の夜寒になるに重ねばや
誰がために打つ衣なるらん

独り寝の夜が寒くなってきたので、私もその衣を重ねて着たいものだ。いったい誰のために打っている衣なのだろうか。

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山家集 - 西行

小夜衣いづくの里に打つならん
遠く聞こゆる槌の音かな

夜の衣を、どこの里で打っているのだろうか。遠くから聞こえてくる砧の槌の音であることよ。

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山家集 - 西行

分けて入る袖にあはれをかけよとて
露けき庭に虫さへぞ鳴く

草を分けて入っていく私の袖に、あわれの涙をかけよと言うかのように、露に濡れた庭で虫までも鳴いている。

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山家集 - 西行

夕されや玉置く露の小笹生に
声はつならすきりぎりすかな

夕方になったことよ。玉のような露が置く小笹の茂みで、その秋初めての声を鳴らしはじめたこおろぎであることよ。

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山家集 - 西行

秋風に穂末波寄る刈萱の
下葉に虫の声乱るなり

秋風に穂先が波のように寄せては返す刈萱の、その下葉で、虫の声が入り乱れて聞こえる。

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山家集 - 西行

きりぎりす鳴くなる野辺はよそなるを
思はぬ袖に露のこぼるる

こおろぎの鳴いている野辺は、遠くよそにあるのに、思いもかけず私の袖に露がこぼれることだ。

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山家集 - 西行

秋風の更けゆく野辺の虫の音に
はしたなきまで濡るる袖かな

秋風の吹く夜が更けていく野辺の虫の声に、きまりが悪いほどまでに涙で濡れる私の袖であることよ。

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