古典和歌stream

山家集 - 西行

虫の音をよそに思ひて明かさねば
袂も露は野辺に変はらじ

虫の声を自分とは関わりのないものと思って夜を明かすわけではないので、私の袂も、露の多さは野辺と変わらないだろう。

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山家集 - 西行

野辺に鳴く虫もやものはかなしきに
答へましかば問ひて聞かまし

野辺に鳴く虫も、私と同じようにもの悲しいのだろうか。もし答えてくれるものならば、尋ねて聞いてみたいものだ。

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山家集 - 西行

秋の夜を独りやなきて明かさまし
ともなふ虫の声なかりせば

秋の長い夜を、ひとりで泣いて明かしただろうか。もし、私とともに鳴いてくれる虫の声がなかったならば。

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山家集 - 西行

秋の夜に声も休まず鳴く虫を
つゆまどろまで聞き明かすかな

秋の夜に、声も休めずに鳴き続ける虫の声を、少しもまどろむことなく、聞きながら夜を明かすことだ。

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山家集 - 西行

秋の野の尾花が袖に招かせて
いかなる人をまつ虫の声

秋の野の尾花の袖に招かせておいて、いったいどのような人を待っているのか、松虫の声よ。

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山家集 - 西行

夜もすがら袂に虫の音をかけて
払ひわづらふ袖の白露

一晩じゅう、虫の声を袂にかけるようにして聞き続けて、払いかねている袖の白露、すなわち涙であるよ。

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山家集 - 西行

きりぎりす夜寒になるを告げ顔に
枕のもとに来つつ鳴くなり

こおろぎが、夜寒の季節になったことを告げ知らせるような顔つきで、枕もとまでやって来ては鳴いている。

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山家集 - 西行

虫の音を弱りゆくかと聞くからに
心に秋の日数をぞ経る

虫の鳴く声が弱っていくのかと思って聞くとすぐに、心の中で、秋の過ぎた日数を数えて過ごすことだ。

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山家集 - 西行

秋深み弱るは虫の声のみか
聞く我とても頼みやはある

秋が深まったので弱っていくのは、虫の声だけであろうか。それを聞いている私とても、命の頼みがあろうか、ありはしない。

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山家集 - 西行

虫の音に露けかるべき袂かは
あやしや心もの思ふべし

虫の声くらいで涙に濡れるはずの袂であろうか、そうではないはずだ。不思議なことよ、私の心はきっと何かもの思いをしているにちがいない。

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山家集 - 西行

独り寝の友には馴れてきりぎりす
鳴く音を聞けばもの思ひ添ふ

独り寝の友としてはすっかり馴染んでいるこおろぎであるが、その鳴く声を聞くと、かえってもの思いがつのってくる。

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山家集 - 西行

草深み分け入りて訪ふ人もあれや
ふりゆく跡の鈴虫の声

草が深く茂っているので、分け入って訪ねて来る人もいてほしいものだ。古びていく昔の住まいの跡で鳴く鈴虫の声よ。

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山家集 - 西行

壁に生ふる小草にわぶるきりぎりす
時雨るる庭の露厭ふべし

家の壁に生えた小草にとりついて、わびしげに鳴いているこおろぎは、時雨の降る庭の露を厭うているのだろう。

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山家集 - 西行

小萩咲く山田のくろの虫の音に
庵守る人や袖濡らすらん

小萩の咲く山の田の畔で鳴く虫の声に、番小屋で田を守る人は、涙で袖を濡らしているのだろうか。

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山家集 - 西行

うち過ぐる人なき道の夕されば
声にて送るくつわ虫かな

通り過ぎていく人もない道に夕方がやって来ると、その声で旅人を見送ってくれるくつわ虫であることよ。

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山家集 - 西行

眺むれば袖にも露ぞこぼれける
外面の小田の秋の夕暮

物思いにふけりながら眺めていると、袖にまで露がこぼれかかったことだ。家の裏手の田の、秋の夕暮れには。

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