源氏物語 - 紫式部
命は絶えるなら絶えもしよう。しかし無常なこの世の常とは違う、二人の仲の契りなのだ。
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二人の間の道を隔てるほどではないけれど、心の乱れる今朝の淡雪であることよ。
頼りなく、空の途中で消えてしまうにちがいない。風に漂う春の淡雪のように。
捨て去ったこの世に残る子を思う心こそが、山へ入る道の足かせであったのだ。
捨てた世が気がかりだとおっしゃるのなら、離れがたいその足かせから無理に離れようとなさらないでほしい。
長い年月を間に隔てて、ようやく逢坂の関に来たというのに、これほど塞き止めがたく落ちる涙であることか。
涙だけは関の清水のように塞き止めがたく流れるけれど、行き逢う道はもうずっと前に絶えてしまっていた。
須磨に沈んで暮らした日々を忘れていないのに、それでも懲りずに、この家の藤の淵に身を投げてしまいそうだ。
身を投げようとおっしゃる淵も、本当の淵ではないのだから、これ以上、懲りない波などかぶりはしない。
私の身近に秋が来たのだろうか。見ているうちに、青葉の山も色を変えてしまった。
水鳥の青い羽は色も変わらないのに、萩の下葉のほうこそ、様子が変わってしまっている。
年老いた身が、生きた甲斐のあるこの浦に出てきて、涙にぬれている海人を、誰がとがめたりするだろうか。
涙にぬれているあなたを波路の案内として、訪ねて見てみたいものだ、あの浜の苫屋を。
世を捨てて明石の浦に住んでいるあの人も、子を思う心の闇が晴れることはないだろう。
光がさし出る暁が近くなった。今こそ、昔見た夢の話をするのである。
どうして、花から花へと木を伝う鴬は、桜をとりわけて塒としないのだろうか。