源氏物語 - 紫式部
深山の木に塒を定めているはこ鳥も、どうして花の色に飽きたりするだろうか。
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よそから見るばかりで手折ることのできない嘆きは深く茂るけれど、それでも名残の恋しい、あの花の夕影であることよ。
今になって顔色にお出しなさるな。手の届かない山桜の枝に心を寄せていたなどと。
恋しく思い悩んでいる人の形見と思って手なずけているのに、馴れよというのに、どうしてそんな声で鳴くのだろう。
私のほかに誰がまた、昔のいきさつを知って、住吉の神代から立つ松に語りかけたりするだろうか。
住の江を、生きてきた甲斐のあった渚だと、年老いた尼も今日こそ知ることだろう。
昔のことがまず忘れられない。住吉の神の霊験を目の当たりにするにつけても。
住の江の松に夜深く置いた霜は、神がお掛けになった木綿鬘なのだろうか。
神に仕える人が手に取り持っている榊の葉に、木綿を掛け添えたような、夜深い霜であることよ。
神職の掛けた木綿と見まがうばかりに置いた霜は、なるほどはっきりとした神の霊験であろうか。
起きて帰っていく先も分からない夜明けの薄暗がりに、どこの露がかかってこのように袖が濡れるのだろう。
夜明けの薄暗い空に、このつらい身は消えてしまってほしい。夢だったのだと思って終わりにできるように。
悔しくも摘み取って罪を犯してしまった葵草であるよ。神が許した挿頭でもないのに。
諸葛の中から、どうして落葉のほうを拾ってしまったのだろう。名は睦まじい挿頭ではあるけれど。
私の身こそ変わり果てた姿になってしまったが、それでいて知らぬふりをするあなたは、昔のままのあなただ。
消えずにとどまっている間さえ、どれほどもあるまい。たまたま蓮の露がこのようにかかっているだけの命なのだから。